研究課題/領域番号 |
26770170
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
前田 雅子 九州工業大学, 大学院工学研究院, 講師 (00708571)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統語論 / 削除 / 移動 / カートグラフィー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生成統語論における主要な研究課題である移動操作と削除操作を統一分析することである。本研究は、削除文において移動操作にかかる制限について通言語的研究を行い、削除構文の統語派生を明らかにするとともに、削除操作と移動操作の相互作用と介在効果を解明することを目標とする。また、対象事象には音韻強勢が関わるため、統語構造と音韻構造の相互作用も検討する。 平成27年度の研究計画は、以下のとおりである。日本語、英語、イタリア語などにおいて、単一文に削除と移動が共起する事象を収集し、比較検討する。特に、動詞句削除、名詞句削除、間接疑問縮約などの削除構文におけるwh移動、焦点化移動、話題化移動などの種々の移動の容認性を精査する。また、日本語の名詞句削除に関しては、九州方言と標準語の比較研究も行う。これらの観察により得られる記述的一般化を基に、削除操作と移動操作の原理の統語分析を行う。その際、削除と移動が統一的原理により支配されている可能性を探る。統一的原理の存在を明らかにできなかった場合、削除と移動を区別する要因を探求する。さらに、移動現象と削除現象に影響を与える音韻的条件の研究により得られた結果をフィードバックすることを通して、実証研究を行っていく。 しかし、育児休業の取得に伴い、平成27年度1年間補助事業を中断したため、研究は進まず、育児の合間に削除と移動に関する先行研究を集め、言語事実を収集するに留まった。平成28年度は、言語事実の収集をさらに進め、上記計画を基に研究を進めたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度は、育児休業の取得のため、研究は進まなかった。育児の合間をぬって、削除と移動に関する先行研究を集め、その分析や言語事実を収集したため、その成果を平成28年度の研究につなげたい。
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今後の研究の推進方策 |
単一文に移動と削除が共起する事象を比較検討する。例えば、英語の動詞句削除文において動詞句からのwh移動は禁止されるが、イタリア語の同様の例では禁止されない。また、英語のAs-引用句やSo-倒置文では動詞句削除が義務的であるが、これらの構文は島を内包できないことから、移動も生じていると考えられる。すなわち、これらの構文では義務的な動詞句削除からの移動が必要である。このように削除文における移動の振る舞いを比較検討する。また、日本語の名詞句削除に関しては、九州方言の名詞句削除が標準語とは異なり代名詞の「と」を生じさせる(健の態度は由紀んと態度より礼儀正しかった)が、これは英語の名詞句削除と類似している(John bought a blue one.)。このことから、九州方言と標準語の比較研究を行うことにより日本語と他言語との比較研究にも役立てることができる。 上記のような移動と削除にかかる制限を統語分析し、そこから移動操作と削除操作を支配する原理を解明する。例えば、削除もまた移動により派生されると仮定し、削除文における移動の禁止を「単一文における2つの移動操作の禁止」に還元する可能性を探る。このような還元論が立証できなかった場合は、移動と削除を区別する要因を削除操作にのみかかる平行性条件(Fox (2000))や移動操作にのみかかる島の条件(Ross (1967))等に帰する可能性を検討する。 また、ここまでで得られた研究成果を国際学会などで発表し、他の研究者からのフィードバックをもらい、研究の方向性の確認・精査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は育児休暇を取得したため、研究が進まなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
言語分析用PC、生成文法関連図書、その他言語学関連図書の購入や、学会発表旅費に使用予定。
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