研究課題/領域番号 |
26770172
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小畑 美貴 東京理科大学, 理学部, 准教授 (80581694)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 生成文法 / 併合 / ラベル付け / インターフェイス |
研究実績の概要 |
本研究では、言語学者ノーム・チョムスキーが提唱した「生成文法理論」に従い、ヒトが文を生成する過程においてどのような計算処理を行っているか、その一端を解明することを最終目標としている。チョムスキーは、ヒトは生得的に備わった「言語能力」を使用することで、非常に短期間のうちに母語を獲得し、また母語に関しては瞬時に文法的な文を生成・理解することができると主張している。この言語能力の中身を明らかにする為に、本研究では文生成の過程で中核をなしていると考えられている2つの操作「併合(Merge)」及び「転送(Transfer)」に特に注目し、その特性を複数の言語データにより検証することで、解明することを目指している。 平成27年度は主に以下の2点に関して研究に取り組んだ。①併合が適用されることによって出来上がった統語的構築物へ対して、どのようにラベル付(labeling)が行われるのか、②ラベルの付けられた統語的構築物は転送によりインターフェイスへと送り出されるが、そこでラベルはどのように解釈へと関与するのか。①に関しては主に日本語と英語の言語データに基づき検証を行い、Chomsky (2013)が提案するラベル付システムの下では説明が難しいとされる[XP,YP]の構造に関して検討し、ある特定の条件が満たされれば、ラベル付は必ずしも義務ではないことを示した。また、②に関しては、意味部門において意味の計算とラベルには一定の関係性が確認できたが、音声部門に関しては必ずしもラベル付が義務的であるとは言えない可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、国内外の学会において、主に口頭発表にて成果発表を行った。また、日本英語学会年次大会において、「併合」に関するシンポジウムを企画・開催し、海外からの招待講演者と日本国内の研究者によって研究発表及び意見交換を行うことができ、大変有意義であった。27年度の研究成果は、28年度以降に論文として出版されることがいくつか確定している。よって、現在までの進捗状況は概ね順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、まず27年度の研究成果の中で口頭発表は行ったが、論文として出版していないものを学術雑誌等へ投稿する予定である。また、28年度は当初の予定通り、併合や転送の観点から、個別言語間差異の問題を中心に扱う予定であり、日本語や英語だけでなく、様々な言語データへと目を向ける予定である。更に、28年度中の研究成果を、国内外の学会において発表し、その後の出版へと繋げる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は28年度分を前倒し請求し、結果として上記の次年度使用額が生じた。この金額が残った理由は、当初2月に京都へ研究打ち合わせで出張を予定していたが、先方の急な事情で、出張を取りやめざるを得なかったことが主たる原因である。また、前倒しして使用した理由は、27年度中に国際シンポジウムを開催したため、海外からの招聘研究者への支払額やその他の謝金等で想定以上の出費があったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度中に、国内外の学会への参加及び昨年度実施できなかった研究打ち合わせを実施予定である為、旅費の一部として使用予定である。特に次年度は最終年度である為、研究成果の発表を中心に行う予定であり、その為の資金として使用予定である。
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