研究実績の概要 |
本研究は、Levin (1993) において orphan verbs (cripple, knight, martyr, orphan, outlaw など) および captain verbs (butcher, captain, host, mother, referee など) として挙げられている、人を表す名詞から接辞が加わることなく派生した一連の動詞の英語史における用法の変遷を、Oxford English Dictionaryにおける引用文やコーパスから収集した用例に基づいて詳細に調査・分析を行うことで、近年盛んに研究がなされている、動詞の意味と統語法の相関関係の歴史の一部を明らかにすることを目的としている。これらの動詞群は伝統的に語形成の分野において研究されてきたが、その統語的用法や、orphan verbsとcaptain verbsの意味的区別の曖昧性については十分な関心が払われてこなかった。本研究は、先行研究におけるこれらの「穴」を埋めることに一つの大きな意義がある。また、コーパスを利用した先行研究が乏しいという背景を踏まえ、コーパスのデータを盛り込むことも本研究の重要な特色である。 当該年度は、先行研究の講読と並行して、研究の根幹となる、調査対象動詞のリスト作成とOEDの引用文の収集に専念した。また、途中成果をスイスの国際学会で発表し、聴衆から貴重なフィードバックを受け、本研究を国際的にアピールすることができた。年度末には研究代表者の母校であるマンチェスター大学(英国)へ出張し、3週間にわたって本研究関係の作業、特に同大学が多数擁している史的英語コーパスからのデータ収集に没頭した。また、出張中に行った学科セミナーでの招待発表では、スタッフと大学院生から成る聴衆から非常に好意的なコメントが寄せられ、本研究の意義と将来性を認められることとなった。
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