研究実績の概要 |
本研究は、Beth Levin 著 English verb classes and alternations (1993) において orphan verbs (cripple, knight, martyr, orphan, outlaw など) および captain verbs (butcher, captain, host, mother, referee など) として挙げられている、人を表す名詞から接辞が加わることなく派生(=品詞転換)した一連の動詞の英語史における用法の変遷を、Oxford English Dictionary Online における引用文に基づいて詳細に調査および分析を行うことで、近年盛んに研究がなされている、動詞の意味と統語法の相関関係の歴史の一部を明らかにすることを目的としている。3年間の研究作業を通して、現代英語におけるこれらの動詞の統語的特徴はいずれも16世紀以降に徐々に成立すること、両動詞群の意味的区別の曖昧性は先行研究で指摘されている以上に大きく、16世紀以降に顕著となり、元の名詞の意味のみに基づいて品詞転換後の動詞の意味や用法を予測するのが困難となることなどを発見し、先行研究におけるこれらの動詞に関する議論を歴史的な統語・意味の観点から広げたことに、本研究の意義がある。 最終年度では、前年度末までに構築したデータベースとその分析を元に、英語史の国際学会で最も権威のあるICEHLにおいて、これまでの作業を総括する内容の口頭発表を行い、聴衆から建設的なフィードバックを得た。発表終了後、その内容の拡大版を長編の英語論文として海外の国際的学術誌に投稿し、掲載可の判定を年度末に受けた。また、同論文で取り上げた現象の1つである、形式目的語 it との共起(例:boss it 'to act as master')の史的発達と他動詞性に特化した論文を書き上げ、海外の別の国際的学術誌に投稿し、本報告書執筆現在査読中となっている。
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