本研究は日本ではまだ例のない真正性の高い接触場面会話コーパスである『日中Skype会話コーパス』を構築することが第一の目的であった。同コーパスは2015年4月よりwebで一般公開され、3年間で120名の利用者があった。そして、このコーパスには「1.真正性がある」「2.電話場面である」「3.縦断コーパスである」「4.話題が統制されている」という4つの特徴があった。中でも4番目の話題による違いは当初の予測を超え、話題によって実質語のみならず、機能語の出現も大きく異なることが判明した。これは教材開発にとって非常に重要な知見である。 最終年度では、全文を人手で話題ごとに分割し、特徴度の指標である対数尤度比(LLR)を計算、この指標を元に13の話題について特徴的な実質語と機能語のリストを作成した。例えば、時間に関わる表現は「ポップ・カルチャー」に多いなど興味深い結果が得られた。 得られた成果はまず 2017年7月に「第10回 日本語実用言語学国際会議 (ICPLJ10) 」で発表した。この発表を元に、海外の英文誌"Journal of Japanese Linguistics"に論文を投稿した。 発表や査読でも指摘されたことであるが、コーパス自体のサイズに限界があることや、話題によって文法が異なるのは母語話者でも同じなのかという疑問が残る。これらの疑問を解決するために2018年度からは新たな科研費プロジェクトを開始し、母語話者を対象にした大規模な話題別会話コーパスを構築、本研究での成果の検証を行っていく予定である。
|