研究課題/領域番号 |
26770183
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
田中 祐輔 東洋大学, 国際教育センター, 講師 (10707045)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 国語教育 / 中国 / 教育思想史 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代中国における深い「日本理解」を支えたものの生成メカニズムについて、日中教育交流史の新たな切り口から描き出すものである。平成27年度の研究実績は、現代中国の知日人材育成に多大なる貢献を果たした中国大学専攻日本語教育が、度重なる困難の中においても一貫して維持してきた日本の国語教育との関係について、「言語政策・教育思想」の観点から調査を行った。具体的には、静岡県、中国・北京市において、教師2名、メディア関係者10名、事業担当者4名、行政官1名にインタビュー調査を行った。また、静岡県立中央図書館、静岡県教育委員会、静岡県庁議会図書室、中国国際放送局、中国外文局、『人民中国』『北京週報』『人民画報』雑誌社といった機関での調査も行った。収集した主な資料は、文献資料約200点、写真資料約100点である。各調査で得られた証言や資料について、これまでの研究成果と併せる形で『現代中国の日本語教育史―大学専攻教育と教科書をめぐって―』(国書刊行会・2015年10月・単著)にまとめあげた。また、アウトリーチ活動にも取り組み、書籍の分担執筆『データに基づく文法シラバス』(第9章)(くろしお出版・2015年10月)、『語彙シラバスの作成を科学にする』(第1章)(くろしお出版・印刷中)、学術誌への寄稿「書評:唐澤富太郎著『教科書の歴史』」(『日本語/日本語教育研究』6号・2015年5月)、「データの視覚化(3)―Word・Excel・PowerPointを用いた作図―」(計量国語学30(3)・2015年12月)や、研究会での発表「書評:広田照幸著『教育言説の歴史社会学』名古屋大学出版会」(日本語/日本語教育研究会第7回大会・2015年9月27日)、さらに、新聞記事への寄稿「心遣い感じた優れた図書館」(『静岡新聞』・2016年3月8日)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画されていたインタビュー調査や史資料調査は順調に進んでいると言える。また、インタビュー調査で得られた各教師・学習者・政策立案者・実施者の証言は、中国の日本語教育史だけでなく、日中関係史上、価値あるものであり、広く社会で共有されるべきものであるという考えから、調査協力者の人権保護と法令遵守のための手続きを行った上で、日本語教育史研究の基礎資料としてのデータベース化を行うことが予定されていたが、映像や音声も含むデータ化が進んでいる。加えて、これまでの成果を『現代中国の日本語教育史―大学専攻教育と教科書をめぐって―』(国書刊行会・2015年10月・単著)という形でまとめあげ、本文には、1960年代から現在までの日本語教科書51冊の分析結果や、国際事業担当者・教師・学習者等60名へのインタビューデータ、行政機関・大学所蔵資料・学術的文献・新聞・雑誌・書籍などのドキュメントデータ、写真・日記・教師会会報など約500点の分析対象を最大限掲載した。以上から現在までの達成度として、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
収集したデータの分析と考察を行う。特にインタビュー調査で得られた証言の分析を行う予定で、得られた回答は文字化し、データの最小単位は、発話から話者交替までとしナンバリングする。分析はデータをQDAソフト(MAXQDA)に読み込み、セグメント化し、コード名をつける。コード化されたデータの内、同一コードとして認められる回答(非同一人物)が複数存在するものを一つの概念と見なし、考察対象とする。また、これまで調査を行った日本と中国の公文書館や資料館、図書館に加え、米国の公文書館への関連資料調査も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた18件のインタビュー調査のうち、1件について、先方の体調不良から辞退の申し出があり、予定されていた経費がかからなかった。そのため、17,048円を次年度使用額とし、新たにインタビュー調査の許諾をいただいた方のインタビュー経費に充てることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
インタビュー調査で得られたデータの文字化に必要な外部発注経費として使用する予定である。
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