本研究は、現代中国における深い「日本理解」を支えたものと、その生成メカニズムについて、日中間で行われた日本の国語教育の内容と手法、教員の交換・交流を進めた「政策・思想」に着目し、日中教育交流史の新たな切り口から描き出すものである。 平成29年度の研究実績は、公文書館と資料館、図書館への調査、および、35名へのインタビュー調査を行った。調査と分析で得られた知見はとりまとめ、書籍や論文等を通して公開した。今年度は、1冊の書籍執筆(「当事者の語りから日本語教育の歴史を考える」(第7章第1節)『公共日本語教育学―社会をつくる日本語教育―』(くろしお出版))、1本の雑誌論文の掲載(「〔書評〕山崎誠著『テキストにおける語彙的結束性の計量的研究』」『日本語の研究』14(2))、2回の学会発表(「JSL児童が在籍学級の学習に参加するための日本語―教室談話と教科書の語彙分析の結果から―」子どもの日本語教育研究会第3回大会/「語彙データから見る日本語教育の現代史―戦後日本語教科書掲載語と作成者のオーラルヒストリーから―」国立国語研究所経年変化班会合)、に取り組んだ。 以上を通して、中国の日本語教育の国語教育との近似性、教師・学習者の文学重視の考えと国語教育への需要・志向性について、それらの背景となった言語政策や社会背景、教育思想に着目し、中国における深い「日本理解」を支えたものと、その生成メカニズムについて明らかにし、予定していた研究を全て実行し目的を達成した。
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