【研究目的】本研究は≪持続可能性教育としての日本語教育学プログラム≫の開発を目的としている。本年度は日本語教師の自律的成長を促すための研修プログラムの実例と意義を示すことを目的とした。 【研究方法】他者と人間的なつながりを作る異文化学習「対話的問題提起学習」と、自己カウンセリング法として発された「ロールレタリング」を、日本語教師の自主的研修の場で用いた。3名の日本語教師が平成24年から約5年間行ってきた研修の場で、参加者は何を学んだのか、その場はどのような意義づけがされる場であったのかを調査した。 【研究成果】研修は、対話的問題提起学習とロールレタリングによってフレーミングされており、形式に添いつつも、主体的な話題選択ができるようになっていた。その結果、価値観やアイデンティティを含む自己開示がなされ、参加者は、「人間として進んでいく力」「他者への理解、捉え方」「問いを自分に発し、客観的な姿勢で判断する姿勢」など、それぞれが必要とすることを獲得し「自律的成長」していた。日本語教育における協働の5要素である「対等」「対話」「創造」「プロセス」「互恵性」(池田・舘岡2007)に基づいて本実践を整理すると、信頼できる相手に自分の状況や考え方、価値観を自己開示しながら[対等]、言語をフルに使った実践(対話的問題提起学習:考える、話す、聞く)(ロールレタリング:考える、書く、読む)で〔対話〕を行った。対話的問題提起学習とロールレタリングの1回ごとの〔プロセス〕、そして、活動を継続した5年間の〔プロセス〕を経て、自分に必要な力を理解し、それを自律的成長とすることができた〔創造〕。成長する仲間は5年間の活動の同行者であった。その存在により、自分の気づきや学びも増えていったため、自律的成長という〔創造〕は、〔互恵性〕に支えられて実現したものであり、〔互恵性〕によって豊かさを増したと考える。
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