まず,本年度の研究実績として,字義的理解を超えた深い内容理解を測定するための方法論に関する追加調査を実施した。具体的には,前年度の課題として残った追加調査を実施した。前年度の研究において,日本人英語学習者が日本語要約課題で求められるパフォーマンスを適切に認識していない可能性があった。そこで、日本人大学生を対象とした実験調査を行ったところ,日本語要約課題におけるパフォーマンスと協力者自身の認識にはほとんど相関が見られなかった (最大でもΤ = .20)。従って,日本人英語学習者が日本語要約課題で求められるパフォーマンスを意識して課題に取り組んでいない可能性が示唆された。このことから,そもそも「字義的理解を超えた深い内容理解」を測定するためには,受験者に日本語要約課題に求められるパフォーマンスを正しく認識させる,もしくは正しく認識できている協力者のみを対象とする実験を実施する必要があることが明らかになった。 次に,研究期間全体を通した研究実績として,「字義的理解を超えた深い内容理解」を測定する方法論を確立するまでには至らなかったが,「字義的理解を超えた深い内容理解の測定」の方法論としての日本語要約課題の有効性と課題,およびイベント索引化モデルが仮定する5次元の状況的連続性を採用することの有効性と課題を明らかにした。今後は,本研究の成果に基づき,読み手の深いテキスト理解を測定する方法論として,日本語要約課題が抱える課題の解決が急務である。今後の具体的な課題としては,受験者から日本語要約課題の適切なパフォーマンスを引き出す方法の検討,妥当性の高い評価基準の策定と妥当化,そしてイベント索引化モデルが仮定する5次元の状況的連続性の得点化手続きの検討が必要である。
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