本研究課題は、日本人英語学習者と英語母語話者が会話を通して知識を共有する過程や仕組みについて、談話分析・会話分析の手法を用いて記述し考察するものである。平成26、27年度は、知識の非対称性に由来する助言談話や、知識の正しさをめぐって対立が起きた競合的な談話を分析した。また、学習者と母語話者がそれぞれの母語や母文化について尋ねたり説明したりするやりとりを観察し、両者の間で対人関係が構築・維持され組み変えられていく様相を記述した。最終年度の28年度は、以下2点に取り組んだ。 1."Do you know ~?"に着目した談話の分析: 学習者‐母語話者ペアによる雑談を資料として、知識の状態に焦点を当てた相互行為について調査した。"Do you know ~?"、すなわち「~って知ってる?」という発話の事例を抽出し、(1)誰が、(2)会話のどのような位置で"Do you know ~?"と問いかけるのかについて、量的・質的分析を通して明らかにした。その上で、(3)"Do you know ~?"が学習者‐母語話者間の会話においてどのような機能を担っているのかという点について考察した。得られた知見は、日本語用論学会第19回年次大会にて発表した。発表内容に加筆・修正を施しまとめたものが、発表論文集に採録される予定である。 2.日‐英接触場面談話のデータベースの構築: 初年度より、学習者と母語話者が対面で行った会話を記録してきた。音声および映像記録に基づいて文字化作業を進め、今年度、全ての会話セッションについて詳細なトランスクリプトを完成させた。
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