研究課題/領域番号 |
26770196
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
近藤 隆子 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教 (60448701)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英語の動詞習得 / 明示的指導の効果 / 主語の有生性の影響 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二言語としての英語の動詞の習得を「自他交替可能有無」という観点から考察し、その成果を大学の英語教育に応用することを目的とし、平成27年度は、非対格動詞の習得に関して、様々な観点から実験、分析を行った。具体的には、(1)中学・高校で使用されている主な英語教科書(中学:15種類、高校:6種類)を選び、学習者がよく誤りをする12個の非対格動詞の出現回数と大学生被験者による文法性判断テストの結果の相関関係について調べた結果、両者の間に相関関係はなく、英語学習者に見られる非対格動詞の誤りは、教科書での出現回数よりも動詞の特性の複雑さに起因するものと考えられる、(2)非対格動詞の習得に関する先行研究の検証を行い、非対格動詞の過剰受動態化は動詞が持つ完結性の程度によるものなのか、それとも統語構造によるものなのか文法性判断テストを用いて調べ、完結性の程度が低い動詞をより受動態の形で受け入れてしまう傾向にあることがわかった、(3)非対格動詞の過剰受動態化を主語の有生性の観点から(非対格動詞の文の主語が有生物なのか無生物なのかの違い)、文法性判断テストによって調べ、無生物の名詞が主語の方が、有生物の名詞が主語の時よりも、受動態を容認する傾向にあることがわかった、(4)上記の結果を踏まえ、自動詞、他動詞、自他交替可能動詞について、大学生を対象に体系的な明示的指導を行い、効果があるかどうかについて、自由作文(文レベル)、文法性判断テスト、語彙テストを用いて調べたところ、明示的指導前のプレテストよりもポストテスト(指導から3週間後に実施)で、被験者の理解が全てのテストで進んでいた。これらの結果から、動詞の分類、主語の有生性・無生性、また、学習者によく見られる誤り(受動態の過剰般化、及び、他動詞構造の自動詞への過剰般化、またその逆)について明示的に説明することの重要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、26年度の研究成果を踏まえた上で、非対格動詞の習得を、(1)教科書の出現頻度との相関関係を分析、(2)先行研究の再検証、(3)非対格動詞の習得においては新しい主語の有生性の影響、(4)明示的指導の効果という、様々な観点から調べた。また、それぞれの結果について、国内外の学会(第45回中部地区英語教育学会、第15回日本第二言語習得学会、第17回言語科学会年次大会、II International Conference on Teaching Grammar)で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、27年度の様々な研究で明らかになったことについてまとめ、論文の形にする。また、名詞の有生性の違いによる学習者の誤りについて、非対格動詞だけなく、wh疑問文における主語と目的語、有生名詞と無生名詞の関係でも調査し、動詞と主語の関係、また、主語の性質について、大学生レベルの英語学習者に明示的指導をする重要性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金の支出が0円であったため:実験を申請者と共同研究者の担当する授業の一環として実施したため、実験参加者への謝金がかからなかった
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次年度使用額の使用計画 |
英語で論文を執筆する際の、ネイティブチェックへの謝金に充てる
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