本研究は、第二言語としての英語の動詞の習得を、「自他交替可能有無」という観点から考察し、その成果を大学の英語教育に応用することを目的として、複数の実験を行った。動詞の構造に関する誤りは大学生レベルでも多く見られ、主語と動詞の関係が文において最も基本的な構造であることを考えれば、動詞の体系的な説明は英語教育において導入されるべきであり、動詞の構造上の誤りは、明示的な教授により習得され得る問題と考え、以下のように、実証的に検証した。(1)非対格動詞と非能格動詞の習得に関する先行研究の検証をおこない、非対格動詞の受動態過剰般化は、動詞が持つ完結性の程度によるものなのか、それとも、統語構造によるものなのか、文法性判断タスクを用いて調査し、統語構造に起因する傾向が見られた。その一方で、統語構造だけでは説明のつかない、非対格動詞間の文法性容認度のばらつきが観察された。(2)したがって、中学・高校の英語教科書における非対格動詞の出現回数と、大学生被験者によるそれらの動詞の誤りの相関関係を調べた結果、両者の間に相関関係はなかった。(3)次に、非対格動詞の主語の有生性の観点から誤りを検証した結果、無生物の名詞が主語の方が、有生物の名詞が主語の時よりも、受動態が容認される傾向にあることがわかった。(4)上記の結果を踏まえ、自動詞、他動詞、自他交替可能動詞について、大学生を対象に、体系的な明示的指導を行い、効果があるかどうかについて調査したところ、動詞の分類、主語の有生性・無生性、また、学習者によく見られる誤りについて、明示的に説明することの効果が明らかになった。(4)さらに、wh疑問文における動詞と主語の関係、主語の有生性・無生性の影響について、英語学習者を対象にさまざまな実験を行い、その結果を検証した。
|