研究実績の概要 |
本年度は、日本人英語学習者のワーキングメモリ(WM)容量とフィラ―ギャップ文処理の関係を調査する前に、WM容量の測定方法として一般的に用いられている、リーディングスパンテスト(RST)に関する研究を行った(神戸大学横川教授との共同研究)。 Nakanishi&Yokokawa(2011)の枠組みを踏襲し、様々な課題を組み込んだ4種類のRST(①通常版、 ②日本語訳妥当性判断課題を加えたもの、 ③文法性判断課題を加えたもの、 ④意味性判断課題を加えたもの)を作成した。さらに、文末単語の親密度を操作し(高親密度条件、低親密度条件)、語彙アクセスの自動化とワーキングメモリの効率性の関連について調査した。なお、平均1文全体の平均音節数・文末平均音節数において、8条件の間で有意差が無いように調整した。 日本人英語学習者36名を対象に、8種類のRSTと英語習熟度を測定する課題(Oxford Quick Placement Test)を実施した。 RST成績に関する主な結果は、RSTの種類において主効果が見られた(再生スコア F (3, 288) = 6.14, p <.01; 処理スコア F (2, 216) = 65.12, p < .01;エラーフリースコア F (2, 216) = 14.34, p <.01)。また、親密度においても、主効果が見られた(再生スコア F (1, 288) = 20.18, p <.01;処理スコア F (1, 216) = 16.11, p <.01.; エラーフリースコア F (1, 216) = 16.43, p <.01.)また、Nakanishi &Yokokawa(2011)同様に、全ての指標において、③文法性判断課題を含むRST成績が最も低いことが明らかになった。今後、更なる分析(親密度別・習熟度別)を、進める予定である。
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