研究実績の概要 |
本研究では、日本人英語学習者の成句表現の認知優位性についての調査を行った。 先行研究では、英語母語話者は成句表現 (Formulaic Expressions)を語彙化し、あたかも1語の単語であるかのように処理している事が明らかとされているが、同様の現象が日本人英語学習者にも見られるか、という点に関しては統一的な見解を見ない。 本研究では、実験の参加者が測定のために使われる言語材料を習得ずみである必要があるという条件をクリアするために、学習初期段階から触れている、句動詞に焦点を当てて、その処理速度を測定することにより、成句表現の認知優位性が見られるかを調査した。 120名の日本人英語学習者に対し、look for, put on, get toの3つのうちのいずれかの句動詞を含む文を5文、さらに、句動詞として処理するべきではない文を5文、計30文をSelf-Paced Reading(キーを押すたびに1語ずつ単語た提示される方式)で提示し、各単語が表示されている時間を測定した。その後、lookとfor、put とon、getとtoが表示されていた時間をそれぞれ合計し、句動詞として処理するべき場合とそうでない場合とで、その処理時間を比較した。また、Self-Paced Readingにおいて意味の処理が行われていたことを示す証拠として、各文の提示終了後には句動詞を構成してる2語が句動詞として使用されていたかどうかについて、Yes/Noで回答を求めた。 全体的な結果として、句動詞の認知優位性は確認されず、句動詞として処理する場合とそうでない場合とで処理時間の差は見られなかった。しかし、句動詞別に見た場合、look afterでは句動詞の優位性がみられ、put onでは逆の傾向が見られた。また、データからは句動詞の処理には個人差が大きいことが示唆された。
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