本研究は、近世琉球を構成した基層的な社会制度である身分制のありように着目し、従来議論されてきた家譜を所持するか否かを特徴とする「士(サムレー)」(系持ち)と「農」(無系)による二大身分の強固な制度像の再検討を試みた。近世中後期において琉球内では、海運業者・医師・庖丁人などの技能者や献金を行い王府へ特段の貢献を果たした者が、その功績をもって士へと編入される例が散見され、身分変更が王府の運営と密接に結びついていたことが明らかとなった。近世琉球における身分制の運用には、柔軟な国家運営を可能とするため身分変更が結びつけられ、それを可能とするような流動的身分状況が広がっていたことが示唆された。
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