本研究は、大名の宇都宮藩戸田家と江戸町名主馬込家との社会的・経済的な関係を検討し、明治維新史を新たな視点で明らかにしようとするものである。 最終年度にあたる本年度は、これまでに収集した史料の分析を進めながら、さらなる関連史料・周辺史料の発見につとめた。特に、これまでは、幕末維新期における宇都宮藩戸田家、江戸町名主馬込家、江戸豪商川村家という、人と人(家と家)とのつながりを解析してきたが、本年度は幕末維新期に至る時代のつながりに改めて着目することで、時代の流れの中に幕末維新期を位置付ける作業を行った。 新たな関連史料の一つとして、本研究で分析の軸とした名主馬込家の娘が近世初期に英国人のウィリアム・アダムス(三浦按針)に嫁したとされる点に着目し、国内における英国側の史料を調査した。この調査を通して、日本語文献だけではなく、The British Library発行のThe English Factory in Japanをはじめとする英語文献・史料(活字)を収集することができ、近世初期の馬込家がどのような環境下でどのような存在であったのかを検討した。近世初期の実態を明らかにすることで、大名家と特殊な関係を有する名主家がどのような特徴を有したのかを検討するだけではなく、馬込家が近世期を通していかに変化して幕末維新期に至ったのかを考究することが可能になり、明治維新期を時代の流れの中でとらえ、より客観的に位置付けるという目的を達成できたと考える。 以上の通り、本研究のおもに初年度と次年度で幕末維新期における社会的なつながりを分析し、本年度では幕末維新期に至る時代のつながりを検討することで、明治維新史をより深く多角的に、そして独創的にとらえることが可能になったと考える。
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