本研究は、譜代大名である宇都宮藩戸田家と江戸の名主である馬込家が、幕末維新期という激動の時代をいかに生きたのかを、金銭貸借関係をはじめとする両家の社会的・経済的関係に着目して明らかにしたものである。研究成果は以下の通りである。(1)戸田家と馬込家は、藩としての金銭貸借関係の解消後もつながりを維持した。(2)馬込家は現在の栃木県で養蚕製糸業などさまざまな新規事業に着手した。(3)戸田家のもう一人の江戸の金主である豪商川村家の特徴には、馬込家との共通点と相違点がみられた。(4)大名家と特殊な関係を形成した馬込家は、特有の歴史的背景や家の特徴を有した。
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