研究課題/領域番号 |
26770216
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
三ツ松 誠 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 講師 (10712565)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本史 / 近世史 / 国学史 / 長野義言 / 井伊直弼 |
研究実績の概要 |
国学者長野義言は、井伊直弼の側近として働き、安政の大獄の推進者として著名である。しかしながら国学者としての彼の著作のほとんどは、刊行はおろか、紹介すらされないままに残されている。そこで、全国に眠る義言とその門人の著作・関連史料の残存状況を明らかにし、義言と直弼の影響関係を解明して、義言研究の展開可能性を示すことを目指した。 研究当初からの予定通り本年度は、彦根藩士として長野義言の門人となり、師の著作や、自らの著作をはじめとした数多くの写本・刊本を保有していた青木千枝の旧蔵書を収蔵している一橋大学附属図書館での調査を実施した。その結果、青木千枝らの桃廼舎社中(義言門人)を中心に、直弼を偲ぶ歌集が明治期に度々編まれており、近代の旧藩社会のなかで義言の国学活動が影響を残していることが明らかになった。また幕末の本居派総帥、本居内遠の批判を受けた義言の反論書も見つかり、当該期の国学界で義言がきちんと認知されていたことも判明した。 こうした関連史料の所在情報の把握とともに、既調査史料の分析、義言と直弼の思想的影響関係の分析も進めた。その結果、義言に独自の神学思想が如何に安政の大獄における直弼の意思決定に影響を与えているか、自分なりの見通しを付けることができ、その一部を学会で発表したほか、共著者となる論集で公表する段取りをつけた(入稿を済ませ、編集サイドの作業を待っているところである)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
長野義言の門人史料の調査、具体的には一橋大学附属図書館所蔵青木千枝旧蔵書の調査を行うとともに、『井伊家史料』等に見られる義言や直弼の言動に関する史料から特徴的なレトリックや政治上の態度を取り上げ、安政の大獄に関する政局史を思想史的な深みから照らし出していく、というのが当初計画に掲げた本年度の課題である。これらについては概ね目標まで到達したと言える。 そして、研究成果の中間報告を行った結果、本研究の成果を次年度の歴史学研究会大会で報告するよう依頼された。当該学会大会は日本の歴史学界においては最大規模のものであり、これは、本研究を通じて幕末政治史に対して一石を投じることを目指す、という大目的からすれば、予想以上の前進と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新年度は、当初計画よりも包括的なかたちで、将軍継嗣問題・安政の大獄に関する政局史と国学思想とを関連付けた議論を組み上げ、学会大会で世に問うことを予定している。それに対する反応を踏まえ、助成期間を通じた本研究の総合的成果を公刊していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
長野義言・井伊直弼の国学思想と安政の大獄を関連付けるという研究課題について、その成果を新年度の歴史学研究会大会で発表し、同会会誌に掲載するよう依頼を受けた。義言研究の展開可能性を示し、幕末政局史に一石を投じる、という研究の大目的を鑑みて、これに合わせて補助事業期間を延長した。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の大会報告に合わせて議論をブラッシュアップするために、またその後、研究を総括するために、必要な追加調査用旅費・資料代に充てる予定である。
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