研究課題
本研究では、中世日本における密教と神道の交渉史を龍神信仰の観点から再検討した。およそ十二世紀後半から天台密教(台密)と真言密教(東密)の思想が神祇信仰と結びついた結果として様々な神道流が形成された。特に伊勢神宮、室生山及び三輪山という霊場における密教と神祇信仰の混淆が注目される。これらの霊場の場合では、密教と神道の交渉における舎利信仰、宝珠信仰または龍神信仰の果たした役割が大きい。しかし、そのプロセスが歴史的にどのように展開したかについてはいまだ解決されていない問題がまだ多く残っている。そこで本研究では、醍醐寺の龍神信仰という観点を重視し、その信仰が中世神道の形成へ及ぼした影響を考察した。まず、本研究を実質的に進める上で必要不可欠である真言密教系、とりわけ醍醐寺系の龍神信仰についての研究をまとめて出版した(『祈雨・宝珠・龍―中世真言密教の深層』(京都大学学術出版会、2016年)。この本では、諸神道流の基盤を形成していた不動・愛染の舎利・宝珠信仰が十二世紀末までに醍醐寺の龍神(善如龍王・清瀧神)の信仰から派生したということを論証した。現在の通説では中世神道は伊勢神宮の周辺に台頭したとされている。これは事実であるが、中世神道思想の源泉そのものは伊勢神宮にはなく、醍醐寺など都の密教寺院にあると考えられる。本研究ではそのような観点から中世の神道に関する様々な問題を考察した。その問題の中で、(1)厳島神社の法華信仰、及び(2)神祇灌頂に関係が深い仏母信仰がある。また、中世神道と直接には関連しないが、一般的に中世の宗教(神道を含む)に大きな影響を与えた舎利信仰の一環である「駄都法」(舎利・宝珠法)の諸相とその歴史的展開についても考察した。
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人間文化研究
巻: 9 ページ: 1-20
Buddhism and Universalism: Perspectives at the History of Asian Civilizations, edited by Marc-Henri Deroche, Iyanaga Nobumi, and Kazuo Kano
巻: 無し ページ: 印刷中