最終年度にあたる2018年度は、これまで調査を行ってきた種子島所在の史料の翻刻作業および考察を進め、その成果を公表した。 2008年に種子島で発見された「御家記」について、種子島内外に所在する史料との比較を行い、おおよその成立の時期を推定することができた。また同じく、今年度分析を進めた「新古見聞記」についても、成立時期や史料の全体像を把握することができた。従来の研究では、種子島家の公的な記録である「種子島家譜」など家譜類の内容や編纂過程が注目されてきたが、「新古見聞記」をはじめとする家譜以外の種子島所在史料にも近世種子島の豊かな情報が含まれていることが分かり、また、それらの史料の成立に重要な役割を果たしたと思われる家臣の存在も明らかになりつつある。 加えて、2018年度には「上妻家文書」を閲覧する機会も得ることができた。同文書の全体像の把握は今後の課題であるが、中世後期から近世初期にかけての種子島を考える上で必要な情報が含まれていることも看取された。 なお、最終年度にあたって、種子島の西之表市において、同市と協力してシンポジウム「種子島と東アジア海域」を実施することができた。本科研において見えてきた近世の種子島と琉球との関係について屋良が報告するとともに、種子島を研究テーマとしている中世史研究者・郷土史研究家も登壇し、種子島をめぐる歴史研究の現状と今後の展望を市民と共有する機会となったのではないかと思われる。
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