研究課題/領域番号 |
26770230
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
日比 佳代子 明治大学, 学術・社会連携部博物館事務室, 専任職員 (40468830)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 転封 / 藩 / 大坂屋敷 / 記録管理 |
研究実績の概要 |
転封によって西国に領地が移動した譜代大名の内藤藩が、どのようにこれに対応したのかという問題について、江戸・延岡と活動の領域が拡大した点に注目し、転封時に新設された同藩の大坂屋敷を素材に研究を進めた。本年度は、転封時の対応につづきその後の展開を分析することとし、19世紀における大坂屋敷を江戸と国元との関係の中に位置づけつつ検討した。 これまでにおこなった内藤家文書の大坂関係記録の全体像の分析を踏まえ、本年度は個々の史料の具体的な分析をおこなった。「大坂状案詞」を中心とした用人系統のもの、「文通留」などを中心とした目付系統のもの、書方や家老が作成したもの、の3つに分類し、タイトル毎に史料の性格を確定する作業を行った。この作業にあたっては、史料の発生理由を理解するために、関連して用人関係、本〆方関係、大目付関係、書方関係の役職内容を示す史料の所在調査、写真撮影をおこない、これらの役職の具体的な内容を確認して、国元や江戸の役職と大坂屋敷詰の藩士の業務とのかかわりについて分析をおこなった。 また、大坂関係記録の中核史料である国元用人差出の「大坂状案詞」と、差出者が同じで対になっている「(江戸状)案詞」について、19世紀のものを中心に写真撮影を行い、大坂屋敷の機能を理解するという観点から二つの記録の関係について分析を進めた。上級藩士が就任した歴代主要役職の記録である「御役人前帳」の翻刻作業を進め、大坂屋敷詰の藩士や関連記録に現れる藩士の由緒調査について、素材となる史料の時期に合わせて19世紀まで対象を広げて追加調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
転封によって藩はどのような影響を受けるかという本研究の課題に対し、当初は転封時の対応を中心に検討を行う予定だったが、大坂屋敷関係の記録の調査を進めるなかで、西国の内藤藩にとって大坂屋敷の重要性が明らかになってきたため、ひきつづき大坂屋敷を素材にしてこの問題を検討することにした。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全体として研究活動を十分に行うことができず、アルバイトも雇用できなかったため、追加で行った史料の所在調査や撮影に時間がかかり、分析の一部や結果の公開を次年度に持ち越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、上級藩士が就任した歴代主要役職の記録である「御役人前帳」の翻刻作業を完了する。そして、転封によって新設された大坂屋敷が、その後どのような役割を担っていくのかを明らかにすることをめざし、近世後期までを対象にした大坂蔵屋敷の研究史の調査と整理、役人の由緒調査の追加などをおこなったうえで、大坂屋敷詰役人と藩政組織との関係をふまえつつ、西国藩の内藤藩にとっての大坂屋敷の機能と役割を分析し成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全体として研究活動を十分に行うことができなかった。学会への参加などもおこなえず、出張費の支出もなかった。また、19世紀の大坂関係史料や藩の役職に関係する史料の所在調査や写真撮影、これまで撮影した史料や紙焼の整理作業、記載データの入力作業などもおこなったが、アルバイトの雇用や外注などの方法はとれず支出がなかった。 次年度には、文献購入費、複写費の支出、アルバイト雇用が可能になれば文献調査作業費、撮影した史料や紙焼の整理作業費への支出を見込んでいる。
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