研究課題/領域番号 |
26770235
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研究機関 | 公益財団法人三井文庫 |
研究代表者 |
村 和明 公益財団法人三井文庫, 社会経済史研究室, 研究員 (70563534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本近世史 / 経済史 / 政治史 / 天皇論 / 朝幕関係 |
研究実績の概要 |
本年度の第一の作業課題として設定した、17世紀における徳川家と朝廷重職者の婚姻一覧表は、おおむね完成した。家光政権までは、東福門院和子に代表されるように、徳川家の女性が朝廷に輿入れする事例がほとんどである。家綱政権期には傾向が一変し、逆に朝廷重職者の子女が徳川家に輿入れする事例がほとんどとなる。 この事実を、あらかじめ設定した3つの分析視角、①江戸幕府の畿内支配と朝廷との経済的関係の制度化、②幕府・大名家の富と京都・朝廷、③公武婚姻と京都に照らしてみる。輿入れに付随して京都に持ち込まれる幕府・大名家の富と人員が、家光政権までは恒常的に存在し、家綱政権になると途絶するということになる。これまで明らかにされてきた、家綱政権期に幕府の上方機構が整備されたこと、またこの時代の朝廷が公家集団の統制・規律化に苦慮したことの前提として、こうした状況を置いて検討すべきであることが明らかとなる。つまり、京都に幕府・大名の富と人員が入りこむ際に、家光政権期までは婚姻関係に付随する嘱人的関係を契機としたが、家綱政権期にはこれが途絶し、制度によって置き換えられていく、と仮説的に見通すことができる。次年度の史料収集と分析に際し、大きな手掛かりが得られたものと考える。 比較対象すべき、徳川将軍家と大名家の婚姻に関しては、尾張徳川家へ輿入れした千代姫の付属人員・財源について、東福門院和子との比較を進めた。また、関連する成果として、御用商人・三井が、17世紀末に形成された幕府の上方の機構に対し、18世紀初頭から恒常的な融資を開始したことを明らかにした。京都にもたらされる幕府・大名の富に、新興商人の制度的な融資が加わっており、これも上述の変容の一部として考えることができる。 研究書の収集、史料情報の蓄積は、順次進行中である。また京都の史料所蔵機関において、朝廷の御用商人の史料を若干収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
参考図書の収集と、それに依拠した基礎的なデータベースの作成は、おおむね見込み通り進捗している。 いっぽう、史料機関での史料調査および収集は、当初の見込みよりやや遅れて進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
作成した婚姻事例の一覧にもとづいて、17世紀の史料を、全国の史料所蔵機関から捜索する。個別の婚姻関係における付属人員、経済支援等について、具体的な史料から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主な予定支出は、参考図書の収集、遠隔地の史料所蔵機関への調査出張旅費、そこでの複写史料の収集、である。本年度は、遠隔地の史料所蔵機関への調査出張を、予定より少ない回数しか実施できなかったため、旅費および史料収集費が、見込みより小さくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
遠隔地の機関の所蔵史料情報の収集と、調査出張・史料の複写収集を進める。
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