研究課題/領域番号 |
26770236
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研究機関 | 公益財団法人三井文庫 |
研究代表者 |
下向井 紀彦 公益財団法人三井文庫, 社会経済史研究室, 研究員 (70625657)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 三井越後屋 / 鳥取藩 / 木綿 / 地域経済 |
研究実績の概要 |
本研究は、三都商業資本の地方展開と、在地商人の商業活動との関係性を双方向から検討し、地域経済の変容の中で双方が如何なる影響を及ぼしあったかを明らかにしようとするものであり、具体的には三井越後屋の鳥取での木綿仕入に関する史料の分析を通して三都商業資本の地方展開の実態を明らかにし、鳥取における在地商人史料の調査・収集・整理を行って、従来明らかになっていない在地商人の経済活動状況を具体化するものである。 平成26年度は関係する未読の参考文献を収集して本研究を進めるための論点の整理と、史料の調査・収集・整理を重点的に行った。 このうち、鳥取の在地商人については、現地での史料調査・収集・整理を進めた。平成26年度は、主に博物館等の所蔵史料に絞り込み、特に米子山陰歴史館の所蔵史料を重点的に調査し、未定稿の地誌の写しや商業・地域経済に関する史料の撮影、整理、筆耕作業等を行った。また、現地の図書館で自治体史等の地方史関係文献の複写も同時に行った。これら収集した史料・文献を読み込んで、米子周辺地域の商人の状況把握と、商業活動や町方の商業政策の実態解明に向けた研究を進めた。 一方、三井越後屋については、公益財団法人三井文庫に所蔵している史料の中から、鳥取の木綿仕入に関する未読史料をパソコンで入力・データ化した。そのうえで史料の読み込みを進め、新たに収集した現地の史料と組み合わせて検証するための準備を行った。 これらの成果は、本研究を進めていくための重要な基礎作業であり、次年度以降の史料調査と研究の方向を定めるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、本研究の基礎的作業として、必要な先行研究を整理し、史料調査と分析を重点的に行うことができた。 鳥取における史料調査・収集活動については、米子市立山陰歴史館の所蔵する史料のうち、在地商人や木綿生産に関する史料の現状を把握し、それらを中心に撮影・整理を行い、調査した史料の文字をパソコンで入力してデータ化を進めた。当初の計画では、本年度中に倉吉博物館と鳥取県立博物館にも調査に行く予定であったが、米子で調査を重点的に行ったことで、上記の二館を訪れられなかったものの、上記機関で想定より多めの調査を行うことができた。また、先行研究の整理も行い、新たな視点から米子周辺の商人を通した地方における商業活動の実態を解明する基礎を作った。 三井文庫所蔵の鳥取の木綿仕入に関する史料については、予定通り整理および入力の作業を進めることができた。これを踏まえて地域経済との関係を明らかにし、在地商人側の史料とつきあわせて分析を行うための基礎を作った。 なお、上記のように史料調査を重点的に行ったため、当初計画していた研究報告と研究成果の発表はかなわなかったが、史料の調査・収集・整理という目的は想定以上に達せられ、研究活動を行うための基盤作りも計画通り進めることができた。次年度以降においてはこれに基づき、他の博物館等の研究機関の所蔵する史料にとどまらず、個人蔵の史料にも幅を広げて調査を行い、また本年度の調査結果も踏まえた分析を本格的に行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの調査・収集の成果を踏まえて分析を進めていき、研究成果の発表を行う。また、調査・収集活動も継続し、新たな史料の発見を目指す。 まず鳥取に関する史料調査・収集については、平成26年度に調査することができなかった倉吉博物館、鳥取県立博物館等の史料所蔵機関での史料調査と撮影による史料収集を進め、収集した史料の整理と分析を行う。前者では倉吉町の商業政策に関する史料から木綿仕入・流通に関する史料を抽出し、後者では越後屋の木綿仕入拠点である買宿の史料を中心に収集する。また、関連する地方史関係文献の収集・複写も継続して行う。ついで、当初予定していた個人蔵史料の調査に向けた準備を進め、可能な限り本年度中に実施する。ここでは、史料所蔵状況の全体像を把握したうえで、特に商業関係史料に力点を置いて幅広く史料を収集し、その整理の過程で鳥取の木綿の生産・流通に関する史料を抽出する。その他の史料についても整理を行いつつ、少しでも関連しうる内容があれば吟味して研究に利用する。三井文庫所蔵史料については継続して整理と文字のデータ化作業を続ける。ここでは現地での木綿仕入のみならず、輸送や加工に関する越後屋の活動も視野に入れて作業を進めていく。 これらの成果を踏まえて史料を読み込んで分析し、越後屋の活動の具体像を明らかにしていくとともに、在地商人との関係について可能な限り具体的に検討し、研究成果としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、米子市立山陰歴史館での調査を重点的に行った結果、当初予定していた倉吉博物館、鳥取県立博物館での調査を実施できなかった。その結果、調査旅費が発生しなかった。また、予定していた調査を実施しなかったことにより、デジカメ等で撮影した史料を保存するためのUSBメモリ、外付けHDD、DVDなどの記憶媒体の購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、平成26年度に調査しなかった博物館での史料調査の旅費と、調査での成果物を保存する記憶媒体の購入費、調査を行った博物館における参考文献の複写費など、調査関係費用に充当する予定である。
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