本研究は、三都商業資本の地方展開と、在地商人の商業活動との関係性を双方向から検討し、地域経済の変容の中で双方が如何なる影響を及ぼしあったかを明らかにしようとするものであった。本研究では、三井越後屋の鳥取での木綿仕入に関する史料の分析を通して三都商業資本の地方展開の実態を明らかにし、鳥取における在地商人史料の調査・収集・整理を行って、従来明らかになっていない在地商人の経済活動状況を具体化した。 平成29年度は、前年度から継続して史料の調査・収集・整理を行い、同時に本研究に関係する未読の参考文献を収集して本研究を進めるための論点の整理を行った。鳥取の在地商人に関する史料は、現地での史料調査・収集・整理を進めた。平成29年度は、米子市立山陰歴史館の所蔵史料を重点的に調査し、商業・地域経済に関する史料の撮影、整理、筆耕作業等を行った。また、現地の図書館で自治体史等の地方史関係文献の複写も同時に行った。これら収集した史料・文献を読み込んで、在地商人の状況把握と、商業活動や町方の商業政策の実態解明に向けて研究を進めた。三井越後屋に関する史料は、公益財団法人三井文庫に所蔵している史料の中から、鳥取の木綿仕入に関する未読史料をパソコンで入力・データ化した。そのうえで史料の読み込みを進め、収集した在地商人の史料と組み合わせて木綿の流通を巡る商業活動について研究を進めた。また、これらの成果をふまえて研究を行い、郷土史団体の研究会等で研究報告を行い、研究成果を学術雑誌に発表した。 これらの研究成果により、鳥取地域において在地商人の活動が在地における都市問屋の活動に与えた影響や都市問屋が在地の経済活動に果たした役割の一端を明らかにできた。
|