最終年度となる今年度は、前年度までに調査した資料の分析を中心としながら、現地調査・関係展示の視察等をとおして、戦国大名家臣関係資料の意義について、現時点での総括をおこなった。 具体的には、研究の中心としている武田家臣山本菅助家の家伝文書について、特に系図・由緒書など系譜史料の再検討をおこなった。その結果、山本家に伝わる系譜史料には、比較的近接した2つの時期に作成されたものに大別され、それぞれ作成の契機とその性格が異なることを明らかにすることができた。 上記の成果については、安中市学習の森ふるさと学習館企画展『山本菅助―真下家所蔵文書の発見―』(会期:平成29年12月2日~平成30年2月26日)において、展示図録に論考「武田氏滅亡後の山本氏―高崎藩士への道程と由緒の形成―」を寄稿するとともに、同タイトルでの講演もおこない(平成30年1月21日)、成果の公表に努めた。なお同展には企画段階から協力しており、展示図録には他に「山本菅助に関わる新出史料の調査と概要」を寄稿し、武田氏家臣の家伝文書が有する歴史的意義について紹介している。 その他の成果としては、前年度に調査をおこなった新出の武田信玄発給文書(自筆書状、穴山信君宛)の成果を公表し、御一門衆穴山氏の位置づけと、当時の武田氏の動向について、新出史料から読み取れる新たな視点を提示した(海老沼「第四次川中島合戦直前の武田氏―新出の武田信玄自筆書状から―」『戦国史研究』75号、平成30年2月)。
|