近代に活躍した著名な中国ムスリム学者、王静斎が著した、コーラン(クルアーン)の漢語注釈、『古蘭経訳解』の内容を、その典拠となったアラビア語・ペルシア語のコーラン注釈と比較しつつ検討し、とくに次の二つの点を明らかにした。第一に、当該漢語注釈書においてその中国ムスリム学者は、聖戦や、それによって防衛すべきウンマ(ムスリム共同体)についての教説を、近代の中国社会やイスラーム世界の歴史的諸状況に応じて、どのように表現したか。第二に、近代イスラーム世界でしばしば批判にさらされた、スーフィズム(イスラーム神秘主義)、とくに聖者崇拝をめぐる問題を、どのように語ったか。
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