研究実績の概要 |
文献調査、臨地調査、インターネット(サイバー)空間上の調査の効果的な接合により、世界各地に離散するタイ族の移住史の再構築と現代におけるタイ族の再ネットワーク化とアイデンティティの変容を明らかにしようとする本研究課題の最終年度の実績概要は下記の通りである。 今年度は、これまでに収集した資料の分析と、インターネット空間での調査を並行して行うとともに、4月に、アメリカのタイ族インドシナ難民の初期定住地であるアイオワ州デモインを訪問し、タイ研究センターや、アイオワ・コミュニティカレッジのMatthew R. Walsh教授の協力を得て、定住に至る個人史の収集を行ったほか、コミュニティ内の文化伝統の実践や海外のタイ族との交流について、関連資料収集とインタビュー調査を実施した。また、3月に、ベトナムの複数のタイ族集落(イエンバイ省、ディエンビエン省、ソンラー省)を訪問し、SNSの利用状況と海外のタイ族についての知識・関心について年代別の調査を行った。 これらの調査結果については、2018年11月の11th Annual Nordic NIAS Council Conference Asia on the Move (Tromso, Norway)において、移動の記憶がアイデンティティに与えた影響に関する報告を行い、そこでの海外研究者との議論をふまえ、2019年度中の英語論文の投稿を準備しているほか、2019年1 月の4th Asian Association of World Historian (Osaka) において、シンガポール南洋理工大学との共同研究プロジェクトの一環として、19世紀以降のタイ族社会の流動性の増大をグローバルな文脈の中に位置づけた報告を行い、報告をもとにした論考を、同プロジェクトの成果物である英文論集へ寄稿予定である。
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