研究課題/領域番号 |
26770245
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
二宮 文子 青山学院大学, 文学部, 准教授 (40571550)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 南アジア / 聖者廟 / イスラーム |
研究実績の概要 |
2016年8月16-29日と、2017年3月13日-24日にインド共和国にて現地調査を行った。2回の調査ともに、ウッタル・プラデーシュ州のラクナウにおいて、同州立アーカイブに所蔵されている文書の調査を重点的に実施した。 2016年8月の調査においては、本科研での中心的な調査対象としているサーラール・マスウード廟(ウッタル・プラデーシュ州バフライチ在)に関する、19世紀から20世紀初頭にかけての行政文書を発見した。内容は、2014年8-9月の文書調査における成果(2015年9月、12月に研究発表済み)の続きとなる文書であり、廟の運営社と英領政府の間で19世紀末まで係争が続いていたことが確認できた。また、英領インド時代に、行政上サーラール・マスウード廟と同様の規則が適用されたデーワ・シャリーフの聖者廟を訪問し、廟の運営に関与している一族に聞き取り調査を行った。 2017年3月の調査においては、2016年8月に調査期間の不足で確認できなかった文書の内容確認を行い、20世紀初頭における、イギリス当局による廟の運営規則の制定の過程を解明することができた。この成果は、本年度9月に開催される南アジア学会にて発表する予定である。 これまでの文書調査によって、英領時代におけるサーラール・マスウード廟の運営体制や、イギリス政府によるイスラーム聖者廟の管理体制、行政面でのアプローチの一端を解明することができた。英領時代の宗教施設に関する行政の研究蓄積は主にヒンドゥー寺院のものであり、本研究の成果は事例研究としての意義が大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの現地調査において、公文書館に所蔵されている文書の確認は十分に行えているが、聖者廟でのフィールド調査はまた不十分である。理由は、限られた調査期間を文書調査に重点的に振り分けたことや、調査期間中に、フィールド調査の対象地域で選挙が行われており、状況が不安定であると判断したことである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、文書調査で入手した材料を用いて、研究発表や論文の投稿を積極的に行う予定である。フィールド調査に関しては、ヒンドゥー至上主義勢力が州政府を担っているという現在の政治情勢から、地方でのイスラーム聖者廟における聞き取り調査などの実施には不安があり、計画には慎重を期したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に現地調査を実施できず繰り越し分が発生したため、昨年度は当初の予定よりも多くの予算が発生した。また、昨年度は研究以外の業務負担が大きく、現地調査に割ける期間が短くなり、予算が消化できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度も業務負担が多い状況が続くため、現地調査は夏期休暇に2週間程度のみ行う。成果発表のための資料入手を積極的に行いたい。
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