研究課題/領域番号 |
26770249
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
飯山 知保 早稲田大学, 高等研究所, 准教授 (20549513)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国華北 / 社会史 / 系譜伝承 / 社会変動 / モンゴル支配 |
研究実績の概要 |
2014年6月2-5日にハーバード大学で行われたThe International Conference on Middle Period China, 800-1400 において“Imagining Kinship in North China, 1200-1400: Genealogy, Family Graveyard, and Steles”と題した発表を行った。また、2014年12月には、九州大学史学会にて「『西隠文稿』からみた元明交替と北人官僚」を発表した。さらに、2015年3月にアメリカ合衆国シカゴで行われるAssociation for Asian Studiesのannual conferenceでも研究発表を行った。 論文に関しては、The Journal of Song-Yuan Studiesに投稿中であった、“Aspiring Between Two Cultures: Official and Scholarly Life of Northerner (Hanren) Literati in Yuan China”が受理され、これは2015年7月に出版予定である。また、『宋代史研究会研究報告集 (10)』に「『西隠文稿』からみた元明交替と北人官僚」を投稿し、これは2015年9月に出版予定である。 また今年度も、中国での現地調査を行なった。具体的には、2014年7月に、山西大学中国社会史研究中心の張俊峰教授の援助を受けて、山西省忻州市で碑刻史料と家譜・族譜の収集調査を行ない、この調査には、National Singapore UniversityのJinping Wang講師も同行した。また、2014年11月に、鄭州大学アジア太平洋研究センターの葛継勇教授の援助を受け、河南省安陽市滑県にて同様の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画の重要な目的は、本テーマでの著書の執筆であるが、これにむけての準備は順調に進展している。The International Conference on Middle Period China, 800-1400 において発表した“Imagining Kinship in North China, 1200-1400: Genealogy, Family Graveyard, and Steles”、九州大学史学会にて発表した「『西隠文稿』からみた元明交替と北人官僚」、そしてAssociation for Asian Studiesのannual conferenceで発表した“Legitimating Ancestry: Transition of Ancestral Narratives and Genealogy Compilation in North China beyond the Yuan-Ming Transition”のいずれも、12~17世紀の華北社会における、先塋碑とよばれる、系譜記録を主目的とした碑刻類型の変化と、その背景となる社会・文化変動を論じており、すでに著書全体の構図は完成した。また、The Journal of Song-Yuan Studiesに掲載される“Aspiring Between Two Cultures: Official and Scholarly Life of Northerner (Hanren) Literati in Yuan China”も、上記の主テーマを補助的に立証する内容であり、本研究計画の達成のための重要な要素である。これらは全て、当初の計画通りの進展である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も夏期と春期の調査を行なう。この年度はとくに、呂梁山脈の西側、黄河の東岸のいわゆる「呂梁地区」を対象地域とする。期間は春期・夏期にそれぞれ2週間程度を予定し、家系顕彰碑の悉皆調査を行なう。以前の調査結果をあわせ、山西における碑刻調査はこの年度で基本的に終了し、合計で30件前後の事例を収集できる見通しである。なお、『中国文物地図冊』や既刊の報告書などによれば、陝西・河北・河南・山東にも同様な家系顕彰碑が現存しており、時間が許す限りそれらの碑刻に対しても実見調査を行なう。 また、この年度も近年発掘された重要な金元墓を訪れ、その地域的差異の分析や、出土文物の実見調査を行なう。期間は2週間程度を予定している。具体的な調査対象は、陝西省西安市長安区で2009年に発掘作業が行なわれた「西安長安区元代劉黒馬家族墓」、山東省済南市郎茂山路で2005年に発掘された「済南郎茂山路元代家族墓」の二箇所である。前者は金代の墓葬の特質を典型的に示し、後者は家系顕彰碑が普及した元代中期以降の華北における墓葬の特質をよく示しているとされる。 そして、こうしたフィールド調査で得た知見を他の研究者と共有し、さらなる議論の進展をみるべく、2016年2-3月には、イェール大学を研究訪問する。同大学のVarelie Hansen教授が受け入れ研究者となり、アメリカ東海岸の諸大学の関連研究者と3回のワークショップをもつこととなっている。19世紀以降の中国社会、とくに家族制度に関して豊富なフィールド経験をもつアメリカの研究者たちとの共同研究は、本研究にさらなる方法論的検証の機会をあたえることとなると考えられる。 こうした、フィールド、在外研究の成果を活かし、著書の執筆を進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の海外調査の費用が、予想以上に安くなったため。また、書籍についても、当初の予想よりも出版量が少なく、使用予算の減少につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度はより多く、また長期間の海外調査と在外研究を行う。
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