研究課題/領域番号 |
26770250
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 隆道 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (40727335)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国史 / 史料学 / 文書研究 / 石刻「文書」 / 碑刻 / 江南士人 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に基づき、平成27年度は次の二点に重心を置き研究を進めた。1、フィールドワーク。2、研究成果の国際的発信。この二点に即して研究成果を記す。 まず1に関して。昨年度に蘇州でフィールドワークを行い、特に碑刻「玄妙観重修三門記」の調査を行った。その成果を踏まえ、その碑刻撰者牟ケンの文集『陵陽集』に注目した。この文集には各種版本が現存しており、6月に台湾台北の国家図書館へ赴き、また10月には中国北京の中国国家図書館・北京大学図書館・中国社会科学院国家科学図書館のそれぞれに赴き、各版本の調査を行った。文献学の基礎作業であるこれらの版本調査を通し、二種類の序文の有無が判明し、文字の異同の確認だけでなく、書籍自体の意味を問う視野を得ることができた。これは史料を抽象的な情報として扱うのではなく史料のモノとしての性質も重視する本研究にとって重要な成果であった。また、10月に実施した山東調査では、従来未見の金代石刻「文書」を得ることができた。 次に2に関して。上記のフィールドワークで得た成果に基づき、台湾と中国での国際会議と三つの国内学会で発表した。特に、当初の研究計画に記した通り、台湾の研究プロジェクト「游於芸:十一至十四世紀士人文化活動与人際網絡」を総括する国際会議に参加して発表し、参加していた海外の研究者に本研究の重要性を訴えることができたことは研究遂行上大きな成果である。その結果として、その会議に参加していた海外の研究者と共同して次年度の国際会議で研究発表することになっている。研究成果の国際的発信と、それによる海外の研究者との研究協力の推進を進めることができた。 これら成果により書を石に刻むことの意味やそれを巡る士人たちの活動を明らかにし、紙の文書上の文字書体等を精密に石の上に再現する石刻「文書」を当時の政治・文化活動の文脈上に位置づけることを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の第2年度となる平成27年度は、当初の計画の通り、フィールドワーク基づく研究を遂行し、その成果を国内外に向け発表した。また、国際会議で学術交流を持った海外の研究者との連携を形成したことにより、計画最終年度となる次年度への展開を準備することができた。研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は宋金元代中国の石刻「文書」を主題とする。だが、本年度の研究成果に鑑みて、石刻「文書」が当該時期における士人たちのどのような政治的・文化的活動の中から生み出されたのかという視点からの考察も不可欠である。そのため、石刻「文書」自体を考察する一方で、それが当時の全体的な状況の中でどのような意味を持ったのかを追求する必要がある。そして、国際会議への出席を通し、本研究を国際的な学術動向の中に位置づけることが、最終年度となる次年度において重要であると考える。
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