本研究の第3年次にあたる2016年度は、第1年次・第2年次の研究で得られた成果をふまえて、19世紀前半のイギリスと大西洋世界における諸革命との関連を考察すべく、調査を進めた。イギリスの図書館・文書館等において、政治評論誌や新聞のような刊行史料の収集・調査をあらためて行ったほか、British Newspapers やHouse of Commons Parliamentary Papersなどのオンライン史料の調査もあらためて網羅的に実施した。とくに未刊行手稿史料については、第1年次ならびに第2年次の調査が当初の計画通りに進展したとはいえないため、おもに英国博物館(The British Library)所蔵の関係史料を中心に調査を実施した。
前年度までの調査では、首都ロンドンを構成する選挙区のひとつ、サザク選出の議員のサー・ロバート・ウィルスンと、彼が強く反対した「外国軍入隊禁止法(The Foreign Enlistment Act)」(1819年)の成立過程とそれをめぐる世論を考察することで、「自由」の概念を中心として、19世紀前半の環大西洋革命の展開が、イギリス本国における改革運動を促したという見解を得ていた。本年度のさらなる研究調査では、ラテンアメリカ諸国の独立運動だけでなく、スペイン立憲革命やギリシア独立戦争のようなヨーロッパにおける革命運動についても視野に入れることで、この見解の確かさをさらに実証的に裏付けるとともに、従来ナショナル・ヒストリーの枠組みのなかで理解されてきた19世紀前半のイギリスの政治過程を、アトランティック・ヒストリーやイギリス帝国史の観点からの相対化と新しい知見の提示を試みた。
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