研究課題/領域番号 |
26770252
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 重仁 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (80712562)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヨーロッパ中世 / カロリング期フランク王国 / 文書形式学 / 書簡 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトの初年度に当たる今年度は、研究の基礎作業としての史料調査を進めることに大きな時間を割いた。国王文書とならび、いわゆる私文書や書簡を収集し、外形(画像ないしファクシミリ版を収集し利用)およびテクスト(校訂版を利用)の両面から調査分析を行っているが、体系的なデータベース構築を完成させるまでにはまだ時間が必要である。しかし史料調査と並行して、こうした史料テクストに見られる表現・書式・様式の生成・常用・消失のプロセスを政治文化史的コンテクストの中で解釈するためのアプローチを模索することも行った。こうした分析の成果は立教史学会シンポジウム(6月)で行った研究報告とそれをもとにした論考において仮説的に提示した。またPolitical communication in the Carolingian worldプロジェクトの中間ワークショップ(6月)においては、文書の発給という行為を通じた、個別案件の解決という枠を超えた個々人のネットワーク形成のあり方、あるいは逆に既存のネットワークに依存したかたちで実現した文書発給のあり方を、「代理人」をキーワードに分析した報告を行った。また11月に公刊された論考においては、書簡のみならず命令書に分類される文書形式をも扱い、後者においては発給者ではなくテクストの受取手(命令執行者ないしは命令による受益者)の違いによって文書の形態が異なり得たことを仮説的に提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体系的な史料調査が完了していないとはいえ、治世や地域などある程度のまとまり毎に史料の分析を行い研究文献の調査も進めたため、上述の通り、仮説的ではあるがいくつかの新しいテーゼを提示することができている。
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今後の研究の推進方策 |
国王文書・私文書・書簡(および命令書)という史料それぞれについての調査・分析を継続し、データベースの完成をいそぐ。史料渉猟のための海外渡航も計画している。その上で各文書そのもののみならずテクスト中の表現や文書の形式などを、その変化をも視野に入れつつ政治的・文化的コンテクストの内に位置づけ解釈する試みを継続する。また秋には上記Political communicationプロジェクトの国際シンポジウムが開催される予定であるため、それまでに研究成果の一部をまとめる。
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