研究課題
本研究計画の最終年度である本年度は、昨年度までの研究を踏まえつつ、以下の成果につながる研究を行った。なおその過程で、同時代の諸地域研究を専門とする若手研究者らとともに非公開の研究会を開催し、本研究代表者自身の報告を含め三度にわたる会合を重ねる中、研究に関する議論や情報交換を行ったことも付記しておきたい。第一に、カロリング期フランク王国影響圏内における書簡文化の研究である。先方の事情により出版が遅れている独仏国際研究プロジェクト『エピストラ』の論集第1巻への寄稿論文を部分的にアップデートし、再入稿した(2017年中に刊行予定)。これは書簡中の抽象的な自称・他称をコミュニケーションの文脈で読み解くものだが、より広い視野で同時代の書簡文化を概観する研究報告を2016年度歴史学研究会大会合同部会で行った(同報告は改稿の上、『歴史学研究』誌に掲載された)。書簡・書簡形式文書の使用文脈や機能、書式・物的形態、自称と他称といった論点を開示しつつ、書簡送付者と受取人との1対1の関係性では完結しないより広範なコミュニケーションの可能性をも指摘した。第二に、カロリング期の教皇たちがフランク王国に及ぼした影響の研究であり、その成果を立教大学で開催された中世教皇庁に関する国際シンポジウムで報告した。本研究計画の方向性に合わせ、主たる分析の対象を証書発給行為としつつも、パリウムの授与や聖遺物の贈与などに加え、フランク王権と教皇座との間を移動する使者といった多様な「メディア」にも目を配り、当該期の教皇たちのアクティビティを描き出した。助成期間終了後とはなるが、同集会でのフィードバックをも踏まえて改稿し、論文として公にする予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Ecriture et genre epistolaires (IVe-XIe siecle), Madrid: Casa de Velazquez
巻: EPISTOLA 1 ページ: 印刷中
史学雑誌
巻: 126-5 ページ: 印刷中
歴史学研究
巻: 950 ページ: 155-164
史苑
巻: 77-1 ページ: 83-95
10.14992/00013228
西洋中世研究
巻: 8 ページ: 271