平成29年度は、以下の二つの柱に沿った研究活動を行った。 1、ルーヴル美術館の開館時の展示に関する研究 前年度までに行っていたルーヴル美術館(共和国美術館)開館時(1793年8月10日)に展示された絵画作品に関して、フランス国立美術史研究所およびルーヴル美術館絵画資料室、フランス国立図書館にて追加の文献・作品資料調査を行い、前年度までに見つかっていなかった情報をさらに収集することができた。フランス国立美術史研究所の図書館の大幅な開架が進んだため、これまで未見であった各作家のカタログ・レゾネや展覧会カタログ、各地の美術館の所蔵作品カタログを網羅的に調査することができた。また、所在不明、あるいは画像未入手の作品についても数点が明らかとなり、展示作品カタログがより完成に近づいた。 2、地方美術館への作品移管に関する研究 革命政府下で行われた中央から地方への作品の移管に関して、二度にわたって行われた大規模な移管の対象となった作品のリストを入手し、来歴(移管元)の把握も進めることができた。そのうちの一部の作品については、各地の美術館で実見調査も行うことができた。また、ややアプローチの方向性を変えて、亡命貴族から接収された美術品の革命期における顛末を調査することにより、中央から地方へ、あるいは外国へという多方向にわたる美術品の移動の実態を部分的に明らかにすることができた。移動の全体像を取りまとめるにはさらなる時間が必要だが、今後段階的に調査結果を公表していきたい。
|