研究課題/領域番号 |
26770258
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
阿部 俊大 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (60635788)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ローマ教皇 / イスラーム / アラゴン連合王国 / カスティーリャ |
研究実績の概要 |
ローマ教皇庁がイベリア半島諸国に対し、特に国内外のイスラーム教徒に関連する事項に関してどのような政策をとっていたのか、そしてイベリア半島諸国は、それらの教皇庁の政策に対しどのような対応をとっていたのか、分析を試みた。特に、イスラーム勢力に対する征服活動がイベリア半島で飛躍的に進展し、かつローマ教皇権が歴史上最も強い影響力を誇ったとされる13世紀前半、教皇インノケンティウス3世、ホノリウス3世、グレゴリウス9世の3代の治世(1198-1241)に注目し、これらの教皇の勅書群を分析して、彼らのイベリア半島諸国、具体的にはアラゴン連合王国とカスティーリャ王国に対する政策の解明を試みた。分析の結果、これらの教皇の政策には、教皇ごと、また王国ごとにかなりの差異が見られたこと、またそれらは必ずしも各々の王国の状況を踏まえたものではなく、肯定的に受容されたわけではないことが明らかとなった。その成果は、チリのガブリエル・ミストラル大学で開催された「第4回中世史研究シンポジウム」で報告し、一定の評価を得ることが出来た。 また、バルセロナ伯領のタラゴーナ地方における、12-13世紀におけるキリスト教徒の植民と支配構造の形成過程を分析した論考を、"The ecclesiastical policy of the counts of Barcelona in a conquered region: the relationship between the counts and the archbishopric of Terragona in the 12th and 13th centuries", F. Sabaté (ed.) Life and Religion in the Middle Ages, Cambridge, pp. 67-102. として出版することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、計画書に記載した通り、アラゴン連合王国で作成された同時代の年代記や国王文書、植民関連文書や、司教座や一部の修道院といった大教会の文書などに依拠し、同国におけるイスラーム系住民(ムデハル)の状況に関して研究を進めた。予定通りに研究を進行できたが、他方、それらの史料では情報に限りがあり、研究の深化にも制約が生じることが明らかとなってきた。 そこで平成27年度は、新たにローマ教皇庁がアラゴン連合王国を対象に発給した文書を利用することを試みた。あわせて、カスティーリャ王国を対象に発給された教皇文書との比較や、当時の西欧や地中海世界全体の政治状況なども念頭に置いて分析を進め、より多くの史料から情報を得、かつより多角的な分析を行って、研究を進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の試みがおおむね順調に進展したので、平成28年度も同じ方向で研究を進めていく。対象とする教皇の治世を、13世紀の第2三半期にまで拡大し、上記の3人の教皇に加え、インノケンティウス4世(1241-1254)、アレクサンデル4世(1254-1261)、ウルバヌス4世(1261-1264)の3人の教皇勅書も使用して、イベリア半島諸国に対する教皇庁の政策や、それに対するイベリア側の対応について、特に国内外のイスラーム教徒に関連する政策を軸に、研究を進めていく。この時期には、年代が下がるにつれて教皇勅書の数がかなり増大していくこと、また教皇庁とシュタウフェン朝との戦いがほぼ終結し、次の教皇クレメンス4世の治世(1265-1268)からはシャルル・ダンジューの影響力が強化されるという、西欧中世政治史上の節目が存在することから、ウルバヌス4世の治世までを当面の年代の下限として研究を行う。最終年度であるため、全国規模の学会における報告や雑誌論文の作成といった、成果の公表も積極的に進めていく。
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