研究課題/領域番号 |
26770259
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中谷 惣 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (10623390)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イタリア中世 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中世後期イタリア都市の公権力の特質を司法と政治との関係に注目して明らかにすることである。近年の司法史研究で採用されている「下から」の実践を通した公権力の構築という視角と、寡頭政期イタリアで見られる司法分野への「政治」の拡大という現象に注目し、14,15世紀の中世から近世への移行期のイタリア都市の公権力の特質を動態的に明らかにすることを目指した。検討対象としたのはイタリア中部トスカーナ州の寡頭的共和制の都市ルッカである。 初年度である平成26年度は、司法への政治介入のひとつである例外的司法について検討した。これは政治機関(アンツィアーニや評議会)が裁判官(ポデスタやカピターノ・デル・ポポロ)に対して、都市条例から逸脱した行動を行うことを許可するというもので、許可を受けた裁判官は実定法に拘束されない手続きや判決が可能になっていた。この例外的司法の許可及び実践についてルッカ国立文書館所蔵のアンツィアーニの決議録、評議会の議事録、カピターノ・デル・ポポロの裁判記録から検討した。この検討からは、アンツィアーニらによる裁判官への「自由」の許可が14世紀を通して増加していること、しかし一方で裁判官が自由に裁判できる案件が限定されるようになっていることが明らかになった。 なお、本年度には、司法と政治との関係性を探るうえでもう一つの重要な点である恩赦に関して、拙稿“The gratia and the expansion of politics in fourteenth-century Lucca”がThe Southern African Journal of Medieval and Renaissance Studies, 22/23が公表された。またイタリア都市の文書管理制度に関する拙稿「イタリア中世都市の文書庫」を『歴史評論』に寄稿した(平成27年7月刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載したとおりの史料に基づいて研究を行うことができた。特に14世紀のアンツィアーニの決議録、評議会の議事録、ポデスタやカピターノ・デル・ポポロの裁判記録を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もイタリアの文書館に赴き史料調査を行う。ルッカ国立文書館で引き続き史料蒐集、史料分析に当たるとともに、類似の史料の存在が想定されるボローニャやフィレンツェの文書館でも適宜史料調査に当たる。また、同分野の研究を行っているトリノ大学のヴァッレラーニ教授やカリアリ大学のタンツィーニ教授らとも意見交換を行い、自らの研究の方向性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通りの使用できたが、当初計画で見込んだよりも安価で出張ができたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額とH27年度請求額を合わせ、主に旅費として使用する。
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