|
本研究の目的は、恩赦や例外的司法に表れる「政治」の拡大に注目して、イタリア中世都市国家の性格の変化を跡づけることである。研究最終年度である本年度は、これまでの2年間の研究で明らかになった、寡頭制期ルッカにおける司法分野への「政治」の介入が増加していく過程について、他のイタリア都市との比較において検討し、研究成果を発信することに注力した。
まずルッカ国立文書館において資料調査を行った。前年度までの研究において、議会議事録や裁判記録から明らかになった恩赦や例外的司法の拡大の過程について、これまでの議論を補完する形でさらなる分析を行った。
これらの研究の成果を、単著『訴える人びと―イタリア中世都市の司法と政治―』（名古屋大学出版会）の第三部において公表した。第8章の「恩赦に見るコムーネと正義」と第9章「例外的司法に見るコムーネと正義」の内容に研究の成果が反映されている。
また、資料調査の過程で明らかになった、中世の文書庫史料の整理と利用のあり方について、ルッカとボローニャとを比較しながら論じた報告を第9回日韓西洋中世史研究集会において報告し、その内容を学術雑誌（Journal of Western Medieval History）に論文として寄稿した。そのタイトルは "Organization and Use of Archival Records in Medieval Lucca and Bologna"である。
|
