研究課題/領域番号 |
26770261
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
高林 陽展 清泉女子大学, 文学部, 講師 (30531298)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 身体観 / 疾病観 / 死生観 / イギリス / 体温計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、19世紀後半から20世紀前半のイギリスにおける身体観・疾病観・死生観の変化を分析することである。この時期のイギリスでは、コレラや結核といった感染症の死亡率が低下し、社会の広い層で相対的な健康が実感されつつあった。その結果、人々は、(1)以前は気にしなかった微細な身体の失調を問題視するようになった。また、(2)感染症ではなく、生活習慣病や慢性疾患へと関心を寄せていった。他方で、(3)死は非日常的なイベントとなり、死との直面はより深刻に受け止められていった。本研究では、このような身体・疾病・死と生にかかわる認識の変化を、「ポスト感染症時代」を迎えた西洋世界を規定するものと捉え、闘病記、病院史料、友愛組合史料などから実証的な検討を試みる。 平成26年度においては、関連文献資料の収集と読解、現地での史料調査を中心に研究活動を行った。特に、平成27年2月22日から同年3月2日かけて、イギリス・ロンドンで実施された現地調査においては、ウェルカム医学史図書館にて文献・史料収集を実施した。上記図書館においては、臨床体温計と体温記録の文化に関する文献・雑誌記事(医学雑誌ランセット(Lancet))の収集を行った。その過程においては、臨床体温計製造業者Tagliabue and CasellaとJamese Joseph Hicks、臨床体温計の利用を重視した内科医William RobertsとClifford Allbuttが重要な役割を果たしていることが確認された。今後は、体温計測という具体的な問題を通じて、以前は気にしなかった微細な身体の失調の問題化、生活習慣病や慢性疾患への関心増大がいかにして近代イギリスで進んだかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、イングランド北部の都市サンダーランドに存在した病院施設にかかわる一次史料の現地調査については、予備的調査段階において、その有効性に疑念がもたれたため、計画を一部変更し、体温計測の問題に絞って検討を進めることとした。そのため、ロンドンを中心とした現地調査を主として行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成26年度において確認された、臨床体温計製造業者Tagliabue and CasellaとJamese Joseph Hicks、臨床体温計の利用を重視した内科医William RobertsとClifford Allbuttの役割について検討するとともに、申請時に調書に記した、(1)篤志一般病院①St Thomas' Hospitalと②Middlesex Hospital、(2)救貧法医療施設③Hackney Union Infirmaryと④Holborn and Finsbury Workhouse Infirmary、(3)専門医療施設⑤Great Ormond Street Hospital for Childrenと⑥Royal Eye Hospitalの臨床記録における体温計測の問題を検討する。
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