研究課題/領域番号 |
26770264
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齋藤 瑞穂 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 助教 (60583755)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歴史地震 / 津波 / 土器編年 / 縄文時代 / 弥生時代 / 貞観地震 / 慶長三陸地震 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
本研究は,これまでに蓄積されている発掘調査データの再精査を通じて,前近代に発生した三陸地震津波の規模とその影響を復原する。精度をより高度化した土器編年に基づく集落の盛衰の整理,高台移転など適応行動の把握,被災地の地域コミュニティで継承されてきた歴史資料の「発掘」を通して,総合的に検討する。 研究計画1年目の平成26年度は,岩手県域の発掘調査データから,地震・津波の影響と判断しうる現象の摘出を行った。縄文時代については,中期後葉大木9式前後の集落廃絶(宮古湾),大木9式→10式の高台移転(山田湾,大槌湾)などが確認された。これは,駒木野ほか(2014)が報告する,岩手県宮古市崎鍬ヶ崎日出島遺跡のイベント堆積物の時期(最花式期)とも調和的である。この大木9・10式期に,日本海側でも地震が発生していることにも注目しておきたい。 弥生時代については,斎野ほか(2010)が中期中葉の大規模な津波を報告しているが,岩手県域でもこの前後を境にして集落が激減しており,その影響が及んでいることが確認できる。中期前半までは低平地や丘陵裾に集落を構えるが,それらは前半までで途絶し,その後は丘陵上でしか痕跡は確認できない。 古代については,鈴木(2013,2014,2015)の三陸土師器編年に基づいて集落の消長を整理した結果,宮古湾・山田湾などで9世紀半ばもしくは後半の集落廃絶がみとめられた。 近世については,齋藤(友)(2014)が,山田湾岸の低地帯で出土したという埋納永楽銭を報告している。16世紀後半~17世紀前葉に属するといい,慶長三陸地震(1611)との新旧関係が,津波後の低地再利用の観点から注目される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岩手県域のデータについては分析を完了することができた。弥生時代の三陸地震津波および貞観地震津波の影響が岩手県域まで及んだことは予想していたが,縄文時代中期の津波が明確に捉えられた点が大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
岩手県に続いて,青森県および宮城県域のデータ分析を進める。また,Tanigawa et al(2014)が,青森県下北半島において5890-5490calBPのイベント堆積物を報告していることをふまえ,岩手県域の縄文時代前期(大木3・4式?)についても,痕跡の有無をいまいちど確かめる必要がある。
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