研究課題/領域番号 |
26770266
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内記 理 京都大学, 文化財総合研究センター, 助教 (90726233)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 西北インド / ガンダーラ / 考古学 / 彫刻 |
研究実績の概要 |
本年度は、西北インドの仏教文化の解明に向けて、以下の研究活動をおこなった。 まず、7月にスウェーデンのストックホルムで開催された第22回南アジア考古学美術史学会に参加し、彫刻の様式の年代学について、英語による口頭発表をおこなった。その発表内容は、1月に同学会の会誌に英文の論文として投稿した。これら一連の活動により、現段階における彫刻の様式の年代観を示すことができた。西北インドの複数地域において、同様の様式の変化が確認されることを明らかにした点で重要である。7月のヨーロッパ渡航の際には、2011年度に1年間滞在したオーストリアのウィーンを訪れ、指導教官との研究打ち合わせ、および同僚との情報交換をおこなった。また、ウィーン大学のデジタル・アーカイブを訪問し、研究に必要な写真の選出をおこなった。さらに、大学および博物館の図書館を訪れ、新に公刊された図書を確認した。 また、本年度は、京都大学に保管されるチャナカ・デリー遺跡から出土した土器の予備的な検討をおこない、遺跡がたどった大まかな歴史を整理した。現段階における土器の検討結果については、3月に京都大学人文科学研究所で開かれた研究会において口頭で発表した。 そして、これまでの研究成果をまとめ、博士論文として、京都大学文学研究科に提出した。博士論文の中には、本年度の検討による成果も盛り込まれている。 これらの活動以外にも、10月に京都大学人文科学研究所で開催された人文研アカデミーに講師として参加することにより、社会・国民への研究成果の発信に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は博士論文を提出する準備に追われたこともあり、研究計画に沿った形で研究を遂行することができなかった。ただし、研究が遅れているわけではない。チャナカ・デリー遺跡の土器の予備的な検討をおこなったことにより、大まかな遺跡の歴史を概観することができるようになった点は、今後検討を進める上で役に立つ重要な成果である。また、博士論文の執筆により、現段階までにおこなった検討からどのようなことが判明したかを整理することができた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
西北インドの仏教文化の研究を進める上で、他地域の仏教文化との比較検討は重要である。本年度の2月には、北インドの仏教遺跡を調査する機会を得た。西北インドで仏教文化が栄えた時代およびその前後の時代における北インドの仏教文化を比較材料として用いることにより、さらに具体的な西北インドの仏教文化の特徴を捉えることが可能であることを実感した。今後、博物館に収蔵される西北インドの彫刻の調査も含め、インド国内の仏教遺跡の検討をおこなうことで、より研究の幅が広げられるのではないかと考えている。現在、他の調査チームと共同でインド国内の調査が実施できないかを検討中である。
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