研究課題/領域番号 |
26770266
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内記 理 京都大学, 文化財総合研究センター, 助教 (90726233)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ガンダーラ彫刻 / ガンダーラ地方 / タキシラ地方 / 考古学 |
研究実績の概要 |
本年度における最も重大な成果として、パキスタン現地への渡航が実現した点があげられる。渡航した際には、本研究をおこなう上で最重要の地域の1つであるタキシラ地方を訪問し、ダルマラージカー遺跡やシルカップ遺跡などをはじめとする遺跡をみてまわることができた。地域の環境や風土を知ることができた点も、本研究を進める上での大きな手がかりとなってこよう。遺跡群から出土した多数の遺物についても、博物館にて実見・観察することができた。遺跡の調査も、また、遺物の検討も、まだ予備的な段階のものでしかないものの、遺跡の残存状況や遺物の保管状況を知ることができたことは、今後どのように研究を進めていくかを検討する上で役に立つ。タキシラ地方以外には、ハザーラ地方、インダス川上流域、パンジャーブ州の遺跡を踏査した。ハザーラ地方においては、かつて東京国立博物館が発掘調査したザール・デリー遺跡を訪れ、遺跡がどのような状態にあるかを確認した。 研究の成果としては、これまでの検討によって得られた見解を単著『ガンダーラ彫刻と仏教』にまとめ、出版した。また、チャナカ・デリー遺跡の土器の調査の途中経過の報告として、日本オリエント学会大会にて口頭発表し、また論文にまとめて公開した。さらに、パキスタン渡航時には、ハザーラ大学でガンダーラ彫刻の様式についての講演をおこない、現地の研究者および大学生と議論する機会を得た。そして、京都大学で開催された国際ワークショップでもガンダーラ彫刻の技法について発表しており、国内外の研究者との連携も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに複数回、パキスタン現地への渡航計画を立ててきたが、いずれも安全面の事情により実現することはなかった。そのような中で、今回、パキスタン現地への渡航が実現したことは、予想外の出来事であった。 また、昨年度執筆した博士論文が、本年度に募集のあった出版助成の対象として認められたため、単著として出版することができた。研究内容が広く世に開示され、より多くの人々によって知られるようになることにより、西北インドにおける考古学研究や関連する研究の議論がより活発におこなわれるようになることが期待される。 以上の2点の成果を重要視して、本年度の研究が「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
パキスタン現地の渡航が今後も可能であるならば、タキシラ地方の遺跡やそこから出土した遺物の調査を継続的に進めたいと考えている。遺跡において遺構の観察・検討をおこない、一方で、博物館においてそこから出土した遺物の観察・検討をおこなうことができれば、それら遺構と遺物の有機的なつながりを知ることができる。ただし、今年の1月には近隣のチャールサダの大学が武装勢力により襲撃される事件も起きており、今後も現地の情勢を確認しながら渡航計画を立てる必要がある。渡航が困難な場合は、ヨーロッパ各国やインドの博物館に保管される関連遺物資料の調査を進める。
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