本年度は、インドでクシャーン朝期の遺跡の踏査と博物館資料の調査をおこなった。訪れたのは、デリーの国立博物館、パンジャーブ州のサンゴール遺跡、チャンディガルの政府博物館、マトゥラー近郊に所在するソンク遺跡、マトゥラー市内にある遺跡群、マトゥラーの考古学博物館、コルカタのインド博物館などである。チャンディガル政府博物館やコルカタ・インド博物館では主にガンダーラ彫刻の調査をおこない、デリー国立博物館やマトゥラー考古学博物館では、ガンダーラ彫刻と同時期につくられたマトゥラー彫刻の調査を主におこなった。 また、イギリスに出張した際には、ロンドンの大英博物館、オクスフォードのアシュモレアン博物館、エディンバラの国立博物館などを訪れ、ガンダーラ彫刻の調査をおこなった。 本年度の大きな成果として、著書『ガンダーラ彫刻と仏教』が三島海雲学術賞に選定されたことが挙げられよう。その元となった博士論文を提出した2014年度も、その内容を改訂しながら著書を準備し、出版した2015年度もまた、本研究課題の研究期間に含まれるため、今回の受賞は本研究課題の成果として位置づけられる。 本年度はまた、様々な学会や研究会、講演会で、研究発表や講演をおこなった。3月にはイギリスのオクスフォード大学で開催された国際ワークショップ ”The Geography of Gandharan Art” に招待され、研究発表をおこなった。国内的に研究の成果が認められるとともに、国際的に研究を発信するための足がかりを得ることのできた、研究上の重要な年度であったと言えよう。
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