研究目的:本研究は、魏晋南北朝~隋唐期の中原に展開した都城に注目し、特に都市空間(里坊)の構造を考古学的に分析したうえで、その東アジアへの展開過程を具体的に位置付けることを目的とする。具体的には、①南北朝期の北魏洛陽城・北斉鄴城を分析し、出現期里坊の構造を明らかにする→②隋唐期の長安城・洛陽城・揚州城を分析し、完成期里坊の構造を明らかにする→③中原地域における里坊の発展を踏まえ、渤海上京城・平城京と比較し、里坊制の東アジアへの展開過程を明らかにする、この3つの課題を進めることを課題とした。 研究方法:研究の方法としては、解像度50cmの高精度衛星画像をGIS(Geographic Information System)を用いて分析し、発掘報告書の遺構分析から析出した造営尺を踏まえて都市空間(里坊)を復原する作業を蓄積し、東アジア都城における都市空間の構造的特徴を比較することにした。 研究成果:4年間の研究期間としてスタートした本課題だが、魏晋南北朝~隋唐期都城の分析、及び上京城・平城京との比較作業は、3年間でほぼ終了した。特に、平成28年度の分析では、北魏洛陽城に始まる里坊制が隋唐都城へと発展する具体的な過程と、長安城・洛陽城のそれぞれのモデルが各国都城に影響を与えた実態を明らかにできた。これらの成果を踏まえた上で、当該研究を更に発展させるため、最終年度前年度申請で新たな研究課題を設定し、基盤研究C「衛星画像のGIS分析による隋唐都城とシルクロード都市の空間構造の比較考古学的研究」(平成29年度~平成32年度)が採択された。そのため、本研究課題の目的・方法、及び視点は、東アジア都城からシルクロード都市に比較の対象を広げて継承し、次の4年間の研究を進めていく予定である。
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