西アジアの肥沃な三日月地帯は、地中海式農耕の起源地として知られている。1990年代には、肥沃な三日月地帯の中でも、西側のレヴァントで最初に農耕・牧畜が開始されたと考古学会では考えられていた。しかし、今世紀に入り急速に発達した遺伝子研究は、対照的に東側のザグロスでも独自に農耕・牧畜が誕生した可能性を示している。 筆者は、研究の空白地帯であったザグロス地域における農耕・牧畜の起源、またこの地域からの農耕・牧畜の拡散のプロセスを解明するため、イラン・ザグロス地域を対象に考古学調査を実施した。その結果、中央ザグロスで誕生した農耕文化がどのように東漸していったか、具体的な知見を得ることができた。
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