研究課題/領域番号 |
26770275
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
重見 泰 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 主任学芸員 (70443570)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 新羅王京 / 飛鳥宮跡 / 藤原宮 / 律令制都城 |
研究実績の概要 |
本研究は、東アジア史的観点から、日本や新羅の古代国家形成過程の特質を考古学的手法により解明することを目的としている。本研究で課題としていた新羅王京に関する発掘調査資料の基礎データ地図は、韓国の文化財庁が進めている遺跡のGIS構築の一貫としてその一部が公表され、さらに詳細な遺構図を含めたGISを構築中とのことである。そのため、当初計画していた基礎データ地図の作成に関しては最低限にとどめ、時期情報の整理を中心に進めている。一方、本研究では日本古代国家の形成を探る上で重要な7世紀代の宮都構造の再整理を進めているが、平成27年度に実施した飛鳥宮跡の再検討で従来の遺構変遷が成立し難いことが明らかとなったことにより、古代国家の形成過程を根本から見直す必要性が生じていた。これを受けて、平成28年度には日本で初めての本格的都城といわれる藤原京の成立過程の分析を行い、天武朝の早い時期から構想されたものであることを明らかにした。平成29年度は、飛鳥宮跡、藤原宮の研究成果を踏まえ、特に飛鳥宮跡を7世紀代の宮都の展開の中に改めて位置付けることによって、古代宮都の展開過程の再構築を試みた。その結果、藤原宮は飛鳥浄御原宮における段階的な公的空間の整備を踏まえて初めて成立するものであること、そして藤原京の構造は律令制都城として機能するものではなく、天皇を支配者として正当化するいわば王宮の延長といえるものであることを明らかにした。今回、再構築した宮都の展開過程は、日本の古代国家形成や飛鳥時代の歴史像の解明にとって重要な材料を提供できたものと考えており、東アジア史的観点においても新たな研究材料を提供できたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新羅王京に関する基礎データ地図の作成計画が、韓国文化財庁が進めるGIS構築事業と重なることを受けて、計画変更を行った。また、十分な研究実績があると考えていた日本の宮都研究について、再検討の必要性が生じたため、基礎的な分析・検討と新たな展開モデルの構築を研究計画に追加したため。
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今後の研究の推進方策 |
新羅王京の中心部および重要調査についての整理を進め、都城研究の課題を整理する。本研究において再構築した日本の古代宮都の展開過程を軸に、両者の基礎データの比較から、古代都城形制過程の復原研究における課題と方向性をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加計画に基づく研究に時間がかかったこと。 現地での資料購入が困難だったこと。
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