研究課題/領域番号 |
26770277
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
若杉 智宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 飛鳥資料館, 研究員 (70511020)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 7世紀 / 土器 |
研究実績の概要 |
本研究は、飛鳥地域出土の土器と難波地域出土の土器の比較から、前期難波宮の造営年代および7世紀半ば以降の宮都の変遷過程を再検討することを目的とする。7世紀の宮都の実年代を考える主たる指標は土器であり、7世紀の畿内の土器編年は飛鳥地域の土器を基準としている。しかし、その基準資料のいくつかは概要が報告されているに留まり、その点が大きな問題となっている。このような現状を考慮し、本研究では、土器基準資料の全容把握を第一の研究課題としている。 研究3年目にあたる平成28年度は、昨年度に引き続き、7世紀の土器基準資料のうち全容が不明である坂田寺池SG100出土の土器群の再整理作業を進めた。各個体の口径・高さなどを計測・記録し、データ化した。記録化が必要な個体については実測図の作成および修正をおこなった。また、発掘調査時の図面等を整理し、土器の各個体について出土層位の確認および集計をおこなった。 以上のほか、7世紀の飛鳥地域へ土器を供給していた生産地の様相把握のため、近年重要性が再認識されている東海地方の窯跡出土土器の資料調査を実施した。実見した資料は、静岡県湖西市所蔵の湖西窯跡群出土土器、岐阜県各務原市所蔵の美濃須衛窯出土土器である。 また、昨年度に引き続き、前期難波宮の発掘調査資料の事例収集をおこない、データ化し整理した。 さらに、大阪歴史博物館、九州国立博物館で開かれた土器や都城に関するシンポジウムおよび研究会に出席し、最新の研究成果の情報収集をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画の段階では、坂田寺池SG100出土土器群の再整理作業に充てる期間は2ヶ年で、昨年度に終了する計画であった。しかし、現状では3ヶ年目でも終了しておらず、来年度も再整理作業を継続して実施する予定である。そのため、進捗状況は遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の第一の課題である坂田寺池SG100出土土器群の再整理作業の完了および報告作業を最優先に進める。難波地域出土土器の資料調査は、再整理作業と併行して進め、比較検討の結果をSG100出土土器の再整理作業報告に付記する計画である。前期難波宮の造営年代については再整理報告で言及する予定であるが、7世紀半ば以降の宮都の変遷過程の再検討については、時間の関係上検討が及ばない可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初の研究計画で予定していたより、本研究に充てることのできる時間が少なかった。そのため、土器の再整理作業に係る消耗品や備品の購入、調査報告書等の購入、資料調査に係る旅費が少なかった。また、前年度からの繰越金も存在した。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も坂田寺池SG100から出土した土器群の再整理作業および報告書作成をおこなうため、それに係る消耗品、機器類が必要となる。また、土器群の評価・位置づけに係る資料調査をおこなうため、旅費が必要となる。比較資料の事例収集に際しては、調査報告書等の図書の購入・複写も必要になると考える。
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