研究課題/領域番号 |
26770280
|
研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
小田 隆史 宮城教育大学, 附属防災教育未来づくり総合研究センター, 准教授 (60628551)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 災害 / 自主防災 / 合意形成 / レジリエンス / 脆弱性 / インクルーシブ / 災害弱者 / アメリカ合衆国 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,2度にわたり渡米し現地調査を行った(後述)。さらに,シカゴ及びサンフランシスコで開催された米国地理学会の年次大会(2015, 2016)において,口頭発表(単著)2件及びポスター発表(共著)1件を実施して,米国をはじめ海外研究者と議論を深めた。また,同分野の専門家とのネットワークを醸成し,本課題研究にとって大変有益な現地訪問となった。 特に,サンフランシスコ・ベイエリアにおいては本格的に訪問調査を実施した。サンフランシスコ市消防局・地域緊急対応チーム調整担当消防司令補,同市危機管理局渉外官,同市人材開発プログラム部長,カリフォルニア州知事室緊急サービス室地震津波プログラム担当官,カリフォルニア州地質調査所研究官,在サンフランシスコ日本国総領事館領事,エスニックコミュニティのNPO等,コミュニティベースの防災ガバナンスに関わる多数の関係者と面談し,研究テーマにかかる聞き取りを行った。 またサンフランシスコ市立図書館やカリフォルニア大学バークレー校,カリフォルニア州歴史協会,サンフランシスコ・ベイエリア計画・都市研究協会(SPUR)等を往訪し資料収集を行い,効果的かつ有益な調査を遂行することができた。また,他の災害研究者の協力を得て,ヘイワード断層やサンアンドレアス断層等,災害のハザートとなる箇所の踏査も実施した。さらに,カリフォルニア州科学アカデミーを訪問し,地元の防災に関する啓発活動の様子を確認した。 現地で得られた,これらのデータをもとに引き続き論文化に向けた分析作業を行った。コミュニティ防災の近年の実態や課題を把握し,多元的背景を有する市民によるインクルーシブな災害リスクガバナンスの実態,防災上の効果,実施における課題や,それらが都市空間の再編成に与える影響等につき地理学的視角から検証する目的の本課題研究にとって大変有益な調査・分析を遂行できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においては第3回国連防災世界会議の学内担当者として多忙となり,本研究課題での取り組みは些か遅れ気味であったが,3月の会議終了直後の平成27年4年に,ニューオリンズ及びサンフランシスコでの現地調査を実施し,帰国後収集した資料をもとに研究会での討議,論文化の作業を進めることができた。また,担当した授業「北米地域理解」においても,これらの内容に言及し,教育活動ともリンクさせることができた。また,8月にはタイ・バンコクに所在するアジア工科大学院大学に客員教員として招聘され授業を担当し,本課題研究にて得られた途中成果をこの授業内容にも反映させ,大学院生及び同大学院防災・減災管理学術院の研究者らと討議を行い,発展途上国における「コミュニティ」防災との比較から,本研究に対して新たなパースペクティブを獲得した。ついで年度末には,サンフランシスコでアメリカ地理学会(AAG)が開催される機会にあわせて集中的な現地調査を行い,多数のコミュニティ防災にかかるステークホルダーからの聞き取りや資料収集を行うことができた。 以上のことから総じて,本課題研究は概ね順調に遂行できていると自己評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで収集したデータ,聞き取り調査の内容,資料等を踏まえて,学会や研究会での発表・討議を重ね,予定通り論文化を進めていく。前回の現地調査においてアポが成立しなかったサンフランシスコ市のレジリアント担当官への100レジリアントシティプログラム採択以降の取り組みについての聞き取り,同市市長室障害者問題担当官及び複数のNPOへの聞き取りを行うための追加現地調査を実施する。さらに,現在の所属機関附属の特別支援学校や教職大学院生(特別支援学校と地域との関係について研究関心を有する)との連携,仙台市内のジェンダー関係団体の関係者との討議を通じて,本研究分析の深化を図る。その後,査読付論文(地理学関係雑誌)として成果を投稿し,論文の完成を目指す。さらに,本研究成果を英語にも翻訳し,現地コミュニティ防災研究者や実践者への成果還元を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度繰越額を活用し,2度にわたる現地調査及び学会発表を実施し,それにかかる旅費及び調査にかかる経費に多くを支出したが,当初購入予定だった調査関連機器等は,所属機関所有物品を借用するなどして支出抑制につとめた結果,一部残余があった。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記残余は次年度に繰越し,追加調査や国内専門家からの指導助言を得たり,国際学会での討議を行ったりして本課題研究の質的改善を図り,本研究の成果到達に有効活用することと致したい。
|