平成28年度のテンポラリークラスターの成果は,以下の2つに分けられる. 第1に,テンポラリークラスター研究の最終年度であることから,日本におけるテンポラリークラスターの支援状況についてまとめるために,東京,大阪,福岡の3都市地域における産業見本市や展示会の支援状況に関する資料の収集と分析を行った. 第2に,北陸地域と九州地域における共同研究開発ネットワークの形成の分析があげられる.両地域ともに国による産学官の共同研究開発支援施策が充実しており,大学や公設試,また一部の中核企業がネットワークのハブとなり,多様な主体が参加をしてきた平成28年度は地域新生コンソーシアム研究開発事業,知的クラスター創生事業,地域結集型共同研究事業等の研究実施主体に関する資料をもとに,地域イノベーションの創出のためのネットワーク形成について,社会ネットワーク分析により検討を行った.企業の多くはネットワーク上で周辺に配置され,複数の事業に研究実施主体として参加し中心的役割を果たす主体は大学や公設試である.ただし,地域を代表する中核企業も大学や公設試と同様に,中心性が高く,ネットワーク進化において重要な役割を果たしうることが示された. なお,2017年1月には,これまでの研究成果をまとめた書籍を発表した. さらに上記の研究成果と,進化経済地理学の成果との融合可能性について検討し,進化経済地理学の分野で提示された「関連多様性」概念に着目した分析枠組みの重要性について,経済地理学会中部支部例会にて報告した.
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