研究課題/領域番号 |
26770283
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
北川 眞也 三重大学, 人文学部, 准教授 (10515448)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 移民 / 地中海 / 境界 / ポストコロニアル / ヨーロッパ / 移動性 / 人文地理学 / 政治地理学 |
研究実績の概要 |
今年度は、地中海の空間性についての昨今の英語圏、イタリア語圏での研究、あるいは移民研究、境界研究の昨今の動向を文献収集・研究を行ってきたが、それと同時に、それをいくぶんはふまえたかたちで地中海と移民に関するいくつかの成果も提出することができた。 「イタリア社会の「うちとそと」――移民映画にみるグローバルな場所感覚」、「移民の墓場と化す地中海――ヨーロッパに求められる応答責任」という2つの論文である。前者では、イタリア人の少年と地中海を渡る移民との関係を描いた映画に着目して、かれらの出会いのなかから少年のなかに生起するグローバルな場所感覚のあり方を指摘した。後者では、地中海が、船でヨーロッパに渡ろうとして失敗した移民たちの墓場になっている状況が、どのようにして生じているのかを考察した。 また、人文地理学会において、「モビリティ・境界・シティズンシップ」と題して、ヨーロッパ・地中海における境界管理を指摘しつつも、それを越えていくような移民たち自身の様々な主体的行為に着目することで、移民とヨーロッパの間の緊張関係こそが、地中海という空間性のあり方にとって重要な意味を持っていることを指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、地中海、移民、境界などの本研究の主題に関わる国内外の重要な文献を収集することができた。また、現在のところそれを読み進めながら、整理・検討できている。また、それに取り組みながらも、移民たちの移動空間とヨーロッパによる移民統治の境界レジームのあいだの緊張関係によって、地中海の空間性が規定されうるという仮説的図式を、公表した論文において提出することができた。したがって、おおむね順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、文献調査を進めながら、その成果を公表していきたいと考える。また2年目、3年目は現地調査を行う。特に、地中海において移民たちの経由地となってきたランペドゥーザにおいて、積極的に資料調査・聞き取り調査を行う必要があると考える。当初は、2004年に地中海で起こった「カップ・アナムール」の一件に焦点を当てるつもりであったが、ここ一年のあいだに起こっている大きな変化、つまり地中海をわたる移民の数が著しく増大している状況、それと同時に数多の移民が地中海で溺死している状況、そしてヨーロッパの地中海への統治技法の変貌を考慮すると、より直近の移民とヨーロッパの動きを通じて、地中海の海としての空間性を明らかにする必要もあると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は文献収集に力を入れていたが、文献の探索・収集・読解のペースならびに過程のなかで、いくぶん次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
使用計画としては、引き続き文献収集の物品費、あるいは2年目から力を入れる予定の現地調査への旅費に使用する。
|