研究課題/領域番号 |
26770284
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
山神 達也 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (00399750)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人口分布 / 通勤流動 / 都心回帰 / 郊外の縮小 / shrinking cities / 大都市圏 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,京阪神大都市圏に対象を絞り,人口分布と通勤流動の空間的パターンの変化を指標として,大都市圏の空間構造の変容過程について検証を進めた。また,大都市圏外縁部に位置する2つの都市で現地調査を実施した。それぞれの具体的な内容は以下の通りである。 1.大都市圏の空間的縮小について論じた既発表の論考について,欧米で盛んに議論されている"shrinking cities"との対応関係を考察できるように書き改めて英文化した。そこでは,日本全体の人口減少および大都市圏外縁部での人口減少という両面から,大都市圏が”slow-burn shrinking cities”としての特性を持ち始めている可能性を指摘し,大都市圏の構造変容に関する国際比較に向けての基礎を提示した。 2.大都市圏郊外における通勤流動に関して分析を進め,その結果について口頭発表を行うとともに論考を執筆した。そこでは,郊外間通勤が増加してきたものの郊外に明瞭な就業上の中心(郊外核)が形成されてはいないことから,京阪神大都市圏では分散的多核化が進展してきたことを明らかにした。加えて,大都市圏内で,人口増加が継続する市町村と大幅な人口減少に転じる市町村との差が次第に明瞭化してきており,人口動態のモザイク化が進展していることを指摘した。 3.上記の1と2の分析から大都市圏外縁部における地域差が大きいことが明らかとなったため,居住人口と従業地による就業者数がともに増加している滋賀県草津市とそれらがともに減少している和歌山県橋本市で,朝の通勤・通学の状況や市街地(住宅地や工場などの就業地)の景観などについての現地調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,初年度はデータベースの作成とその地図化,及び大都市圏の設定を行う予定であったが,大都市圏の空間構造の変容過程に関する論考の執筆依頼を受けたことから,当初の計画を変更し,京阪神大都市圏に対象を絞り,人口分布と通勤流動の空間パターンに関する研究から進めることとなった。そのため,初年度に実施予定であった内容について進捗状況は好ましいとは言えないものの,2年目や3年目に予定していた内容の一部を先行して実施した。また,大都市圏外縁部における現地調査を実施することができた。こうした点から,研究計画とは実施する順番が異なるものの,研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は,まず,初年度に実施予定であった1980年から2010年までの人口のデータベース作成とその地図化を行う。次いで,それらを用いて従前の設定基準に基づいて大都市圏の設定を行い,平成の大合併前後で,設定される都市圏の数・人口・面積などがどれほど異なるのか,またその状況に都市圏の人口規模や立地する地方に応じた差異があるのかなどを検証する。その後,平成26年度の研究成果を踏まえ,中心都市の通勤圏の空間的縮小や郊外における就業上の中心(郊外核)の成長の有無,そして相互に錯綜した通勤流動の増減などについての都市圏間比較を行う。あわせて,特徴ある動向を示す市町村について,現地調査を実施する。以上の研究を通して,新たな都市圏設定に向けた基礎とするともに,大都市圏の空間構造に関する国際比較研究に向けた基盤を展示することとしたい。また,上記の各作業では,学生による研究協力を仰ぎ,効率的に研究を進めたい。
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